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【主張】帰還困難区域の初解除 福島の真の復興へ重要な一歩
東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域の避難指示について、福島県双葉町は来年3月4日、大熊町は同5日、富岡町は同10日に一部を解除することで国、県と合意した。
帰還困難区域は、放射線量が比較的高いことから、国が原則立ち入り禁止として指定した区域で、第1原発が立地する双葉町、大熊町など7市町村の一部にまたがっている。この区域の避難指示解除は今回が初めてであり、福島復興への重要な一歩である。
避難指示が解除されるのは、特定復興再生拠点区域(復興拠点)のうち、双葉駅(双葉町)、大野駅(大熊町)、夜ノ森駅(富岡町)の周辺。特に唯一、全町避難が続いてきた双葉町では、初の避難指示解除となる。
併せて、一部で不通となっているJR常磐線が来年3月14日に全線再開する見通しで、鉄路の復活と合わせ、交流人口の増加が期待される。
とはいえ、解除の対象範囲が駅周辺のエリアなどに限定され、生活インフラはまだ整っていないため、すぐに避難者の帰還につながるわけではない。復興庁による富岡町の避難者らに対する最新の意向調査では、「戻りたいと考えている」は8.1%で、約半数は戻らないと決めている。
「元通り。それ以上望まない」。発災から2週間後、避難所に身を寄せる住民が慟哭する姿が目に焼き付いている。今も、変わりゆく故郷の風景を受け入れられない人もいよう。好むと好まざるとにかかわらず、原発事故に翻弄され続ける住民の苦悩はあまりに深い。
ともかくも国は、多様な思いを抱える被災者の心の襞にまで寄り添い抜く覚悟で、復興を進めねばならない。
「帰還困難区域の再生をもってはじめて真の復興と言葉で表すことができる」(富岡町長)と言われるように、避難指示の一部解除は福島の本格復興のスタートであり、町民が戻りたいと思えるまちづくりの追い風にしていきたい。
来年3月26日には東京五輪の聖火リレーが福島県のJヴィレッジからスタートする。福島の未来を照らす聖火ともなろう。発災9年となる来年3月を、復興を加速させる重要な節目とすべきである。