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2019年12月23日

全世代型社会保障へ

人口減少・少子高齢に対応 
負担の検討、個々の生活実態踏まえて 
来夏の最終報告めざし議論加速 
石田政調会長に聞く

石田祝稔 政務調査会長

人生100年時代に突入する中で、全ての世代が将来にわたって安心できる「全世代型社会保障」の構築に向けた議論が政府・与党内で進んでいます。公明党の全世代型社会保障推進本部は18日、中間提言を安倍晋三首相に申し入れ、政府の検討会議も中間報告を取りまとめました。最終報告を取りまとめる来年夏をゴールに今後、議論・検討がさらに加速されます。現時点で明らかになっている年金、医療、介護の改革のテーマや方向性について、党推進本部長の石田祝稔政務調査会長に語ってもらいました。

――全世代型社会保障の意義や、給付と負担のあり方について。

人口減少と少子高齢化で社会保障の支え手が減る中で、いかに経済成長を維持し、持続可能な社会保障を再構築するかが課題になっています。今後、医療や介護の費用上昇は確実であり、財源の問題に目を向ける努力が求められます。

しかし、現役世代が極端な負担を強いられたり、弱い立場の人の給付が安易に下げられたりすることがあってはなりません。このため公明党は、財政論のみからの議論でなく、単純な年齢の区切りによらない、個々の生活実態を踏まえた負担能力に応じた負担という視点に立って検討するよう政府に提言しています。

厚生年金 段階的に適用拡大

年金の繰り下げ受給

――年金改革の要点は。

高齢者や女性の就業率が上昇し、就労の長期化や多様化が進んでいることから、就労と年金受給のあり方や、厚生年金の適用拡大などで見直しを行います。

賃金と厚生年金の合計額が60~64歳で月28万円、65歳以上で月47万円を超えると年金が減る「在職老齢年金制度」については、働く意欲が抑制されているというデータがある60~64歳の基準額を47万円に引き上げ、年齢による違いをなくします。

また、受給開始年齢について、現在は「65歳から」を原則として60~70歳の間で選べますが、65歳受給の原則は変えずに上限を75歳にまで拡大し、就労状況に合わせて柔軟に選べる制度にします。70歳開始にすると、繰り下げ加算により受け取る年金額は42%増となりますが、75歳開始では84%増となる計算です。

――厚生年金の適用拡大については。

より多くの人が手厚い保障を受けられるよう、パート労働者への厚生年金適用を進めるべきです。一方、厚生年金は保険料を労使折半することから、中小事業主への配慮も必要です。

現在、従業員(正社員などの社会保険加入者)500人超の企業を対象に、週労働時間20~30時間などの要件を満たすパート労働者に厚生年金を適用する制度が実施されており、政府は企業規模要件の引き下げを検討しています。公明党は、引き下げは一定の時間をかけて段階的に行い、中小事業主への支援策もセットで実施するよう訴えています。

併せて、パート労働者に対しては、年金の増額や、厚生年金とセットで加入する健康保険の各種手当などの利点を丁寧に説明する取り組みが必要です。

75歳以上 医療費「原則1割」基本に

現行の医療費窓口負担

――医療については。

政府では医療費抑制のため、外来受診時における少額の定額負担が議論されましたが、見送られました。窓口負担を3割とする基本ルールに反するため、公明党も導入するべきではないと提言しました。

75歳以上の後期高齢者の窓口負担については、現行の原則1割負担という仕組みを基本として、負担能力に応じた負担という観点から、慎重に検討するよう求めています。後期高齢者は、負担割合が原則1割(現役並み所得者は3割)と低く設定されている一方、受診回数が多く、実際の負担額は他の世代と変わらないからです。政府の中間報告では「一定所得以上の人は2割」としていますが、生活実態や利用状況を踏まえ、具体的な影響を丁寧に見ていく必要があります。

市販の医薬品と同じような効果があり代替が可能な薬(市販品類似薬)を保険対象外とする政府の検討については、どの薬を対象外にするかという制度設計が難しく、慎重に対応するべきと考えます。

介護サービス費の負担上限「現役並み所得」で見直し

現行の高額介護サービス費制度

――政府は今回の中間報告とは別に、介護保険の持続性を高めるための負担見直しを検討しています。

所得に応じて介護サービスの利用者負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」制度について、高所得者の上限額引き上げが検討されています。

現在は年収約383万円以上が「現役並み所得」として、ひとくくりにされ、上限額は一律で月4万4400円です。年収が1000万円を超える世帯と、その半分に満たない世帯が同じ上限額である特段の必要性は見当たりません。医療費の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度では、既に「現役並み所得」の区分が三つに細分化され、高所得者の上限額が高くなっています。

介護保険でも区分の細分化と上限額の見直しを検討することは、やむを得ないと考えます。

――他の検討項目は。

住民税非課税世帯の施設入所者などの食費・部屋代を所得や利用施設に応じて軽減する「補足給付」について、二つの観点で検討が行われています。

一つは、非課税世帯でも預貯金などが基準額(単身1000万円、夫婦で2000万円)を超えると給付の対象外になりますが、施設入所者の実態を踏まえた基準額の見直しが検討されています。

また、補足給付は収入などに応じて段階的に給付額が決まりますが、対象となる世帯と、対象外であるものの収入は非課税世帯に近い人との間で、不公平感が生まれているとの指摘があります。そこで、収入などの区分(段階)の見直しが検討されています。

今後、公平性や見直しによる影響を十分に考慮し、結論を出していきます。

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