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子ども 中小企業 支える税制へ
与党大綱で西田税調会長に聞く
12日に決定された2020年度与党税制改正大綱は、公明党の主張が反映され、最大の焦点となっていた未婚のひとり親への支援をはじめ、中小企業の生産性向上や地方経済の活性化など、暮らしを力強く支える税制となりました。税制改正大綱のポイントについて公明党の西田実仁税制調査会長に聞きました。
税制改正大綱のポイント
未婚のひとり親の負担軽減
――税制改正論議で公明党が勝ち取った成果は。
西田 全体を通して、子どもや中小企業を支える各種軽減措置を数多く盛り込むことができました。
その中で、まず挙げたいのは、寡婦(夫)控除の適用を未婚のひとり親に拡大できたことです。子どもの貧困対策が大きく進みます。
年収678万円(所得500万円)以下の世帯、寡婦控除の適用拡大
――具体的な内容は。
西田 寡婦控除は、配偶者と死別・離婚した、ひとり親の税負担を軽くする措置です。これまで対象外だった未婚の人についても、年間所得500万円(年収678万円)以下の場合、所得税は20年分から35万円、住民税は21年度分から30万円の所得控除を受けられるようにします。ただし、住民票で事実婚を届け出ている場合は対象から外れます。
――既婚・未婚によって差別されない仕組みとなったわけですね。
西田 そうです。“子どもの立場から見て、不公平であってはならない”という点を、公明党は強く主張しました。また、男女間の格差をなくす観点から、控除額は男女共に35万円にするとともに、男性だけにあった所得制限(年間所得500万円以下)は女性も同様とします。
――公明党は執念を持って取り組んできました。
西田 14年度の税制改正を巡る協議で今後の「検討事項」として取り上げて以降、一貫して実現を求めてきました。19年度与党税制改正大綱では、一定の年収以下にある未婚のひとり親の住民税を21年度から非課税とし、所得税の扱いについても20年度税制改正で「結論を得る」としていたのです。
一方、各地の自治体では、公明党地方議員の推進により、未婚のひとり親を寡婦控除の対象とみなし、保育料の軽減などを実施してきました。こうした公明党のネットワークの力が、今回の改正への流れをつくったと言えます。
小規模な保育も非課税 生産性向上へ投資促進
――他に、子ども重視の支援は。
西田 ベビーシッターなど、1日に預かる乳幼児が5人以下の認可外保育についても、利用料にかかる消費税を非課税とします。職員数など国の指導監督基準を満たすことを要件とし、保育の質の確保・向上につなげるのが狙いです。
――中小企業支援は。
西田 企業の生産性向上を後押しするため、革新的な技術などを持つベンチャー企業への出資を促す「オープンイノベーション税制」を創設します。投資する企業には、出資額の25%を法人税の課税所得から差し引きます。当初は、1億円以上を投資する大企業だけが対象でしたが、公明党の主張で、1000万円以上を投資する中小企業にも門戸を開きました。
また、中小企業の交際費を800万円まで全額損金に算入できる特例について、19年度までとしてきた期限を2年延長。併せて、消費税の申告期限も1カ月延長できるようにし、事務負担を軽減します。
――地方経済の活性化も重要です。
西田 地方経済の底上げには、雇用の創出が欠かせません。そこで、東京23区から地方に本社機能を移すなどした企業の法人税を減税する「地方拠点強化税制」を2年延長。移転先の雇用に着目した税額控除を拡大します。
――次世代通信規格「5G」も注目されています。
西田 高速・大容量のデータ通信を可能にする「5G」の普及に向け、設備投資額の15%を法人税額から差し引くか、30%を経費に上乗せして課税所得を減らすかを選べるようにしました。携帯電話大手に加え、地域の中小企業や病院、農業従事者などが通信網を独自に構築する「ローカル5G」の整備を支援します。
所有者不明土地に対策
――いわゆる所有者不明土地への対策も盛り込まれました。
西田 近年、相続登記されていないなどの理由で現在の所有者が分からず、市町村が固定資産税を課すことができない土地や家屋が全国で増え、問題になっています。
そこで、実際の使用者への課税が可能となるよう地方税法を改正することにしました。また、空き地も売却しやすくするため、保有期間が5年を超えていて、売却額が500万円以下の場合、売却益から最大100万円を控除します。
このほか、老後に備えた資産形成を後押しするため、少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」の延長や拡充を実施。また、東京五輪のメダリストが各競技団体から受け取る報奨金に対する非課税枠を拡大するとともに、パラリンピックのメダリストにも同様の非課税措置を創設します。