ニュース
“展望2026” 自由貿易体制の転機
開かれた経済社会維持へ、日本は外交で指導力発揮せよ
政策研究大学院大学教授 岩間陽子氏
現在の国際情勢の非常に大きな流れとして、米国経済は依然として世界最大であるが、製造業の面で衰退が見られ、これが世界に対する影響力の低下につながっている。また、先進国全体で富が少数の人に集中し、中産階級が薄くなるという社会の二極化や分断、格差の拡大が見られ、これは産業構造の変化と直結している。
トランプ米政権は、こうした背景の下「昔の米国を取り戻したい」という強い気持ちの表れとして関税で壁をつくり、米国の製造業と雇用を復活させようとしている。
トランプ政権の関税措置は、直ちに世界大不況をもたらすほどには至っていないものの、全体として良い方向には向かっていない。最大の問題は、世界の中で巨大なマーケットである米国市場へのアクセスにおける「予測可能性」が失われてしまった点にある。この予測可能性の低下により、他国は自衛のために動き、中期的な対応を模索せざるを得ない状況となっている。
自由貿易体制は、そもそも19世紀の英国で登場し、戦後の米国が引き継いだアングロサクソン中心の制度である。一方、トランプ大統領は、ゼロサム的、重商主義的な発想をしており、アンチグローバリゼーションの流れとも重なり、自由貿易体制は転機を迎えている。
■グローバル化停止、深刻な副作用伴う
グローバリゼーションが世界全体の貧困脱出に大きく貢献してきたことを鑑みると、それを止めることには深刻な副作用が伴う。人の流れを止めることは、世界中から才能を吸収して成長してきた米国自身の経済成長やイノベーションの力を減速させることにつながり、自国の強さを損なう行為である。
米国の存在感が低下するにつれて、気候変動対策のような分野では、中国が自らのリーダーシップを確立するために動き出している。これは米国中心の世界システムが徐々に変質し、過渡期に入っていることを示唆している。
日本は、開かれたルールに基づく世界秩序を維持するというメッセージを積極的に発信し、同志国と制度化の努力をすべきである。自由貿易制度の維持はもちろんのこと、人の移動に関しても必要なルールを明確化した上で開かれた社会を維持していかねばならない。
また資金力ではなく、知恵とソフトパワーを生かし、周辺国と対等なパートナーとして国際制度を作っていく外交を展開する必要性がある。モノの動きと人の動きを結びつける将来志向の設計図を明確に掲げ、開かれた経済と社会を維持することが、長い間この制度の利益を享受してきた日本の国益であると同時に責任でもある。この局面で知恵を出し、指導力を発揮して、来るべき転換期を乗り越えねばならない。










