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【主張】米国の国際機関脱退 目に余る多国間協調の否定
戦後、米国自身が主導してきた多国間主義に基づく国際協調の枠組みを否定する横暴な振る舞いである。
米国のトランプ大統領が7日、国際機関や条約からの脱退や資金拠出の停止を指示する大統領覚書に署名した。対象は31の国連機関を含む66に上り、今後さらに増える可能性もある。
国連貿易開発会議や国連平和構築委員会、国連女性機関など経済協力、平和構築といった幅広い分野にわたる。世界全体で取り組むべき課題への対応が後退するのは避けられず、国家間の格差や不平等の拡大が懸念される。事態は深刻だ。
象徴的なのは、温暖化対策に関する国際的なルールを定めた「パリ協定」の前提となる国連気候変動枠組み条約からの脱退だ。米国は既にパリ協定からの離脱を表明しており、27日に正式離脱する。
さらに条約から離脱すれば、世界の温暖化対策にブレーキがかかることは必至だろう。途上国や災害に弱い地域に対する支援の停滞、対策の遅れによる被害の拡大が危ぶまれる。
また、国連財政に与える影響も甚大だ。グテレス事務総長は、国連総会で承認された分担金の支払いは国連憲章に基づく「加盟国の法的義務」だとして、米国に資金拠出を求めている。
「自国第一主義」を掲げるトランプ氏は、既に世界保健機関(WHO)や国連教育科学文化機関(ユネスコ)などからの脱退を表明してきたが、国益を優先し続ける姿勢は「孤立主義」そのものであり、目に余る。米国は、大国として果たすべき責任を自覚せねばならない。
各国が一致して、米国に対して国際協調の枠組みにとどまるよう、粘り強く働き掛けていくことが極めて重要だ。日本は先進国の一員として主体的に関わるべきで、政府は米国と国際機関をつなぐ役割を積極的に果たしてもらいたい。
一方で、国際情勢が不安定化する中、各国は米国抜きでも気候変動問題や世界経済・貿易などで世界を安定させる取り組みを着実に進めていく必要もあろう。









