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【主張】企業の情報システム 刷新しないと大きな経済損失に
国際競争力の維持・強化に向け、企業の情報システムの刷新を早急に進めなければならない。
急速に進展するデジタル技術を活用した経営改革を企業に促す「改正情報処理促進法」が先週、成立した。
改正法の最大の柱は、日本企業の多くが直面している「2025年の崖」を克服することにある。
これは、人工知能(AI)など新しいデジタル技術の登場で世界的に産業のあり方が変化する中、日本企業の約8割が老朽化した情報システムを抱え、デジタル技術への対応が十分にできない現状を憂慮した言葉である。
日本企業は1970年代から、世界に先駆けてシステムの導入を進めてきた。ところが、抜本的な刷新を先送りし、必要に応じた改修だけを重ねてきた結果、システムが肥大化・複雑化し、社員でさえ内部構造が分からないブラックボックスになっているケースが多いという。
これを放置すれば、外国企業との競争に太刀打ちできなくなることに加え、システムの管理費用が増大し、企業のIT予算の大半を占めるようになる。
その経済的損失が数年後には年間12兆円にまで膨らみ、日本経済全体に深刻な影響を与える懸念があることから「2025年の崖」と呼ばれ、対策が急がれていた。
なぜシステムの刷新が進まないのか。
主な要因として指摘されるのが、デジタル技術を活用したビジネスに対する経営者の認識の甘さである。
このため改正法では、企業経営で情報システムを戦略的に活用するための指針「デジタルガバナンス・コード」を国が策定し、これを踏まえた優良な取り組みを行う企業を認定することなどを定めた。
認定を受けた企業は優秀な人材や投資を呼び込めることから、経営者の意識改革を促し、デジタル改革を後押しする効果が期待できよう。
企業にとって情報システムの刷新にかかるコストは大きいに違いない。しかし、「安物買いの銭失い」になりかねない現状は見直すべきである。今回の改正法を契機に、デジタル改革を積極的に進めてほしい。