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【主張】住宅団地の再生 空き家の活用が空洞化の歯止め
高度経済成長期の日本の象徴とも言うべき「住宅団地」が、危機に直面している。
地方から都市部への人口流入などに対応するため建設された住宅団地は全国で約3000に上り、その半数以上は一戸建てが中心だ。しかし、初期の開発から半世紀が経過し、住民の高齢化や空き家の増加が課題となっている。
ところが、住宅団地の多くが土地の用途を住宅に限っており、例えば地域内の空き家を活用して商業施設を開設して住民の利便性を高めようとしても、煩雑な行政手続きが必要になる。このため地域の再生が思うように進まず、空洞化が一層進むという悪循環に陥りやすい。
超高齢社会にあって住宅団地の生活環境をどう維持するか。この課題に対処するための改正地域再生法が、2日に成立した。
改正法の最大の柱は、自治体や住民、企業でつくる協議会が団地再生の事業計画を策定することを条件に、行政手続きを簡素化し、空き家などを使って店舗や福祉施設、オフィスを設置しやすくすることだ。
これにより地域の活性化が期待できる。生活関連施設の充実は空き家を減らすことに加え、子育て世代を呼び込むことにもつながるからだ。さまざまな世代が共生できる地域づくりを進める上で、今回の法改正の意義は大きい。
ただ、街のありようを変えることは容易ではない。土地の用途変更や住宅以外の建築物の設置は、住民の賛否が分かれる事態も想定される。
この点、住宅団地の活性化に独自に取り組んでいる自治体の例を通して、住民が地域の将来像を共有しやすくすることが大切ではないか。
参考になるのが北海道北広島市の取り組みだ。同市内にある北広島団地も人口減少・少子高齢化が進み、商業施設や公共交通の縮小、空き家の増加が大きな課題だった。そこで同市では、団地内の容積率を緩和して新たな建物の建築促進をめざすほか、住民同士が世代を超えて交流するイベントなどを実施している。
改正法は年内にも施行される。政府は、住宅団地の再生に向けた協議会の設立や事業計画づくりも、しっかりと後押ししてほしい。