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急がれる選択的夫婦別姓の導入
旧姓の通称使用には限界
ジェンダー(社会的性差)平等の実現において、日本で長年課題となっている夫婦同姓制度を巡る問題。自民党と日本維新の会は先月、両党間で交わした連立政権合意で旧姓の通称使用の法制化案を2026年の通常国会に提出する方針を明記した。しかし、国際社会で旧姓の通称使用はほとんど通用しないなど、制度としての限界が指摘されている。通称使用の現状や課題、導入を求める声が高まっている選択的夫婦別姓制度について解説する。
■経済的・心理的負担など解決できない課題数多く
民法750条で結婚時に夫婦のいずれかが姓を改め「夫婦同姓」にすることが定められている。こうした規定があるのは国際的にみても日本のみで、約94%の夫婦が夫の姓を選び、妻が改姓している。
一方で、結婚後も仕事を続ける女性が増える中、社会生活において既婚者が便宜上、旧姓を通称として使う慣行は、改姓によるキャリアの分断回避をはじめ、戸籍上の姓を変えることによる不便さを解消する目的で広がってきた。
01年から国の行政機関で職員の旧姓使用が始まり、19年に看護師免許証や住民票、マイナンバーカード、運転免許証の旧姓併記が導入。21年にはパスポートの旧姓併記の要件が緩和されるなど政府は利用拡大を後押ししてきた。民間企業でも利用が広がり、帝国データバンクの調査によると、約6割の企業で旧姓の通称使用を認めている。
しかし、通称使用の拡大では解決できない課題が数多く指摘されている。
代表的なのは税務関係の手続きで、納税通知書などは戸籍上の姓で表記されることが原則だ。銀行口座の扱いはさまざまで、内閣府と金融庁の調査によると、7割近くの銀行で旧姓での新規口座の開設などを認めているものの、そのうちの約7割は旧姓使用の背景や理由の説明、資料の提出を求めている。
また、通称使用は日本独自の制度であるため海外では理解されにくく、旧姓が使用できる場面が限られる点も大きな課題だ。
パスポートには旧姓が併記できるが、渡航先でダブルネームと理解されて説明を求められるケースや、旧姓で渡航先のビザ(査証)の取得や航空券の購入が難しい現状などが指摘されている。
こうした中、自維連立政権合意を受けて高市早苗首相は平口洋法相に対し、旧姓の通称使用に関する課題の整理と必要な検討を行うよう指示している。
■国連委が3度の是正勧告
旧姓の通称使用とは別に、導入を求める声が社会的に広がっているのが「選択的夫婦別姓制度」だ。これは、夫婦が同じ姓を名乗る現行制度に加えて婚姻関係にある夫婦が別姓を望めば、それぞれ結婚前の姓を称することができるものだ。
選択的夫婦別姓を巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)が導入を盛り込んだ民法改正案要綱を1996年に答申。以来、法務省は同年と2010年に改正法案を準備したものの、答申から30年近く経過した現在も国会提出には至っていない。
最高裁は現行制度を合憲とする判断を示しつつも、15年と21年に「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」と指摘する。法律の専門家などからは、片方の姓を強制的に変更させることで被る不利益は、「人格権」の一つである氏名権を侵害しかねず、憲法第13条(個人の尊重)、14条(法の下の平等)、24条(家族生活における両性の平等)に反するとの意見も出ている。
国際社会も日本の現状に厳しい視線を送る。国連女子差別撤廃委員会は03年、09年、16年の3度にわたり現行制度を是正するよう日本に対して勧告している。
■経団連も早期実現求め提言
こうした中、昨年6月には日本最大の総合経済団体である日本経済団体連合会(経団連)が、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める政策提言を初めて発表。提言では、通称使用によるトラブルが「企業にとっても、ビジネス上のリスクとなり得る事象であり、企業経営の視点からも無視できない重大な課題」と指摘し、「不自由なく自らの姓を選択できる制度の実現」を求め、注目を集めた。
制度導入への機運が高まりを見せる中、今年の通常国会では立憲民主、国民民主の各党がそれぞれ別姓を導入する独自の関連法案を提出し、28年ぶりに衆院法務委員会で審議入りした。ただ、国会閉幕に伴い、法案は継続審議となった。
■公明、別姓の法制化を主張
公明党は、人権を守る観点から一貫して選択的夫婦別姓制度の法制化を主張してきた。01年には独自の民法改正案を国会に提出。成案には至らなかったものの、その後も政府に対して提言を重ねてきたほか、国政選挙の公約にも制度導入を掲げてきた。
21年8月には、法制化への機運を高めようと各地方議会から国会に対して意見書を提出する取り組みを党を挙げて推進した。
今年1月には議論の加速へ党内に選択的夫婦別姓制度導入推進プロジェクトチームを設置し、関係者などと精力的に議論を重ねている。










