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2025年11月11日

(論壇)「強い経済」へのカギ

為替安定が最大の物価対策 
電子化など構造変える勇気を 
慶応義塾大学教授(元日銀審議委員) 白井さゆり

高市早苗政権が掲げる「強い経済」には、強い意欲が感じられる。だからこそ、日本が直面する課題に向き合い、現実の構造に踏み込む勇気が問われている。

インフレ対策の核心は「食料」である。2020年1月対比で日本の物価は11%上昇したが、食料は27%も上昇した。物価上昇の6割超も占めている。

ガソリン・電力料金などを含むエネルギー価格は補助金の支給が繰り返されたこともあり、13%の上昇にとどまり、物価上昇の1割弱に過ぎない。

物価上昇の主因は、22年から始まった円安にある。農業資材や飼料の価格が上がれば、国内の生産者も苦しくなり、消費者の食卓にも直結する。日本の食料はほとんど輸入なので、円安はすぐ物価上昇に結び付く。

それなのに、政府が掲げる物価対策は、赤字病院の補助、地方の中小企業支援、ガソリン・軽油の旧暫定税率の撤廃が挙がる。こうした支援は車が主要交通手段の地方にとって短期的な支えになるが、物価対策とは本質的には異なるのではないか。

ここでカギとなるのは、為替安定への明確な意思だ。150円を超える極端な円安を是正するには、日銀による利上げだけでは不十分だ。日本は内需が弱く、利上げの余地が限られているからだ。覚悟を決めて、米国のトランプ大統領が掲げるドル安方針と連携し、「150円前後の超円安は望ましくない」と日米首脳が強く明確な発信をし、共同介入の姿を見せれば、為替市場のけん制につながる可能性がある。15年にドル円レートが125円に達した時は、当時の麻生太郎財務相と黒田東彦日銀総裁のけん制発言で円安は止まった。

消費が停滞する日本では、為替安定こそが最大の物価対策であり、乏しい財源の中、国民生活を守る土台となる。農業のデジタル化や再生可能エネルギー活用による生産性の高い農業基盤をつくれば、食料安全保障の強化と合わせて、日本の食卓を守る力は強まる。

もう一つの柱は、政府の電子化とデータ連携だ。給付付き税額控除を実現するには、所得や社会保障の情報を結び付ける仕組みが必要だ。データ連携により、支援が本当に必要な人に自動的に届く社会が実現できる。行政の効率化により、企業の生産性も上がり、賃金上昇へとつながる。政府が率先してデジタル化を進めることが、真の「強い日本」への近道である。

東欧エストニアのように、税・年金・医療・教育のデータを安全に共有できる社会が広がれば、行政コストは減り、民間の創造力が促される。「国民の信頼を基盤にしたデジタル国家」を築くことで、日本はアジアの新しい中心として再び輝けるだろう。

インフレを抑え、電子化を進めるという二つの課題は、家計・中小企業への支援を迅速にし、必要な支援が簡素な手続きで必要な所に行き届き、働く意欲が賃金と成長に結び付く社会への道筋となり得る。高市政権がそれに向けた実行力を示せば、「強い日本」とは、家計が守られ、行政が効果的に機能し、企業が挑戦できる、人と仕組みが信頼で結ばれた国のことだと、世界に示すことができる。

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