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西田幹事長の参院代表質問(要旨)
■(はじめに)「政治とカネ」の決着が優先
憲政史上初の女性首相、新政権の誕生にお祝い申し上げる。国民の大きな期待に応えられるよう未来に責任ある政権運営を求めたい。
私たちも、協力すべきは協力し、正すべきは正し、日本の政治を前に進める決意だ。
公明党は、昨年来の国政選挙の厳しい審判を受け、「政治とカネ」の問題を解決しなければ国民の信頼を取り戻すことはできないとの覚悟で連立解消を決断した。自民党の皆さまとは、長きにわたりご指導を賜り、さまざまな国難を乗り越えてきた。心から感謝申し上げる。
しかし、首相の所信表明では「政治とカネ」の問題への具体的な言及がなく、「政治への信頼を回復するための改革」という抽象的な表現にとどまった。この「改革」とはどういうものなのか、明確に示していただきたかった。
また、自民党と日本維新の会の政権合意では、行政府を預かるための合意にもかかわらず、立法府が決めるべき議員定数の削減ばかりが強調されている。三権分立はどこへいったのか。
「身を切る改革」は理解する。しかし、優先すべきは「政治とカネ」の問題に決着をつけ、国民の信頼を回復した上で、庶民の暮らしを圧迫する物価高対策に迅速に取り組むことではないか。
公明党は、中道改革勢力の結集軸として、「一人の声」を大切にする人間主義の政治を貫いていく。庶民の暮らしを守り、地域と社会に安心と希望を広げていく。
その具体策として、五つの政策の柱を掲げた。一つ、「世界の平和と安定を図る現実的な外交・安全保障」。二つ、「信頼を取り戻す政治改革」。三つ、「科学技術による成長と、経済・エネルギー・食料の安全保障」。四つ、「教育・ジェンダー・共生など包摂社会の実現」。五つ、「新たな社会保障制度改革」だ。
これら五つの政策の柱を打ち立て、首相が強調される「強い日本」「強い経済」のその先に、私たちの生活はどうなるのか、そこに焦点を当てて、以下、具体的に質問する。
■(賃上げと経済成長)即効性ある物価高対策急げ
第一の優先課題は、持続的な賃上げと経済成長の実現であり、そして当面、何より重要なのは、庶民の家計の負担を軽減する即効性ある物価高対策だ。首相の所信表明では、給付金は「国民の皆さまのご理解が得られなかった」として実施しないと断言された。一方、各種メディアが選挙で民意を得たと言う「消費税減税」については何も語られなかった。
食料品価格の上昇は止まらず、生活者の体感物価が10%を超える中で、早急な支援は待ったなしだ。しかし、今回の首相の所信には、給付はやらない、消費税減税は言及なし、給付付き税額控除は「制度設計に着手」、年収の壁は「真摯に議論」と述べるにとどまり、いずれも体のいい先送りだ。地方独自の支援策である重点支援地方交付金は、自治体ごとの準備や手続きに差があり、物価高への即効性に欠ける。
連立を組む維新の会は、物価高対策として飲食料品の消費税2年間ゼロを掲げている。これは1人当たり年間2万~3万円程度の支援に当たり、現下の物価高対策にはその規模の支援が必要だということなのだろう。しかし減税は、制度改正に時間がかかる。
そこで、実現までのつなぎとして、年間2万~3万円程度の支援、または所信でも触れられた電気・ガス料金を半額にするほどの支援が必要となるが、後者の場合、明らかに地球温暖化対策に逆行する。将来的なあるべき制度構築の前に、足元の生活に困っている方々に、まずは一息ついてもらう、そのための即効性ある支援はいったい何をするのか。
物価上昇を上回る賃上げを定着させるための支援について伺う。一部の大企業を中心に賃上げが進む一方で、多くの中小企業や非正規で働く方々には、いまだ十分に行き渡っていない。このままでは格差は広がり、暮らしの安心も持続的な経済成長も望めない。
「継続的に賃上げできる環境を整えることこそ、政府の役割」と首相の言われる通りだ。であるならば、賃上げ促進税制の縮減などは、政府の誤ったメッセージとなりかねない。東京商工リサーチによれば、政府が掲げる、2020年代に最低賃金の全国平均を1500円に引き上げる目標に、「不可能」と答えたほぼ半数の企業が、「賃上げ促進税制の拡充」を求めている。
まず、政府が掲げてきた20年代に、全国平均の最低賃金を1500円に引き上げる目標は堅持するのか。目標を変えないのであれば、とりわけ中堅・中小企業向けの賃上げ促進税制の縮減はすべきではないと考える。
■(社会保障改革)資産把握の仕組み整えよ
第二に、国民生活の安心のよりどころである社会保障制度の改革について伺う。首相は、所信表明で「社会保障制度改革を進める中で、現役世代の保険料負担を抑える」と述べられた。これは現役世代の生活を支える上で重要な視点だ。
一方、維新の会も、参院選の公約で「社会保険料を下げる改革」を掲げ、「医療費を年間4兆円削減して、現役世代1人当たり年間6万円の負担軽減」としている。この4兆円の削減のためには、OTC類似薬の保険適用除外と、病床数の適正化で2兆円を賄うとしている。医療DXも掲げているが、その削減効果は不明のため、残り2兆円の捻出は、もっぱら高齢者の窓口負担を増やす必要がある。国民医療費のうち、70歳以上の方の医療費は約24兆円なので、維新の会の公約に従えば、70歳以上の高齢者の窓口負担をおよそ1割増やすことになる。
首相は、診療報酬の引き上げを述べている。これは国民医療費の増額につながる。その一方で、現役世代の保険料負担を減らすのであれば、より一層の高齢者の負担増、具体的には窓口負担を増やす、こうした世代間での負担調整によって財源を確保すると考えられる。そういう理解でよろしいか。
その上で、政権合意には、「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」も明記されている。賛成だ。そのためには、金融資産や不動産など資産の正確な把握が欠かせない。
預金については、既に任意での番号付番が実施されており、預金保険機構が口座の名寄せシステムを持っている。一定以上の口座残高保有者に付番を義務付ければ、同機構での口座情報の管理は可能だ。有価証券口座の番号付番は既に義務化されている。
不動産においても、固定資産税台帳に一部自治体が既に部分的に付番している。来年度以降、自治体の標準システムで固定資産税台帳での付番管理が進むので、税務当局が固定資産税額を基に、資産把握できる仕組みの整備は可能だ。「年齢によらない真に公平な応能負担」のため、ぜひ、預金や有価証券、不動産などの資産を把握するインフラを本格的に整えないか。
誰もが希望に応じて活躍できる社会の土台として、より長く健康でいられることが大切だ。その実現のために、わが党が力を入れているのが、健康づくりと予防医療の推進だ。がんを含む生活習慣病の重症化予防は、生活の質の向上や、健康寿命の延伸だけでなく、医療費の抑制効果も期待できる。また、高齢者が心身ともに健康を維持・向上させるためには、社会とのつながりを強化することも重要だ。就労を含むさまざまな地域や社会活動への参加は、健康に良い影響を与えることが、国の健康増進計画でも示されている。
例えば、国民の健康づくりの行動に対するインセンティブ(動機付け)の付与や、高齢者が人生経験や知識を生かして活躍できる環境整備・マッチング機能の強化など、具体的な取り組みを進めるべきだ。活力ある健康長寿社会をどう実現するのか。
■(政治改革)企業団体献金の規制強化を
第三に、国民の信頼を取り戻す政治改革について伺う。政治とカネの問題は、政治家個人が起こしたものであり、一般の国民の皆さまにとっては何ら関係ない。しかし、自ら起こした問題も解決できない政権に、私たちの暮らしを守ることなどできるのか。それが率直な国民の思いであり、先の国政選挙の結果だと思う。
首相は、総裁選中に、政治資金パーティーを巡る収支報告書への不記載問題に関して、「既に決着済み」と発言された。しかし、国民一般は「いまだ真相解明されていない」と認識している。
みそぎが済んだと言われる国政選挙後にも、元政策秘書が略式起訴されたり、還流再開を求めた幹部名が法廷で明らかになったり、検察審査会の議決により、「不起訴不当」として再捜査が始まったりしているからだ。
わが党との政策協議の際にも、首相は改革の必要性は訴えていたが、私たちが求めた不記載問題の真相解明について、具体的な行動は何一つ示されなかった。
最新の世論調査でも、自民党の派閥裏金事件に関わった国会議員を政府や党の要職に起用することについて、7割を超える国民が「反対」の意思を示している。
やはり事件の真相解明、何らかのけじめが必要なのではないか。確か、首相は不記載議員は「内閣には入れない」とおっしゃったと記憶しているが、それに準じる副大臣や政務官には複数の不記載議員が任命されている。どのような判断基準なのか。
さらに、企業・団体献金の規制強化について聞く。30年前の政治改革では、献金が政治をゆがめないよう、政治家個人への献金は禁止されたが、政治家個人が支部長を務める政党支部への献金は認められた。その結果、政党支部が議員個人の企業団体献金の事実上の受け皿になっているのではないか、と批判されている。
わが党および国民民主党は、こうした批判を踏まえ、企業団体献金を受けられるのは、政党本部および、都道府県連のみとすることなどを定めた規制強化の法案を作成中だ。これにより、政党支部が議員個人の財布ではないことを明確にする。速やかに国会に提出し、各政党との協議に臨みたいと考えている。この政党支部と議員個人の財布を切り離す規制強化策について、自民党総裁として、どうお考えか。
■(教育・子育て、共生社会)奨学金減額返還、拡充速やかに
第四に、教育・子育て支援、共生社会の実現について伺う。物価高騰で苦しむ若者に寄り添い、負担軽減に向けた奨学金改革を行うべきだ。
まず、奨学金減額返還制度の拡充だ。現行の最大4分の1の減額に加え、新たに6分の1段階を新設することを提案する。これは速やかに実行すべきだ。
次に、企業による奨学金の肩代わり返還支援の拡大。長野県では、多様な働き方や若者の育成に取り組む企業を認証し、県が全額補助をして拡大している。こうした取り組みは、企業や自治体への定着促進になるが、普及率は低く、インセンティブを強化して、全国拡大を加速化すべきだ。
加えて、公明党は、住宅ローンへの減税と同様、奨学金減税を提案している。これは奨学金返済額の一定割合を所得控除、または税額控除することで、制度設計次第では、返済額の半分を国が支援することも可能となる。奨学金返済の負担軽減は、企業や自治体に丸投げするのではなく、国も支援する姿勢を示すべきだ。
さらに、返済不要の給付型奨学金の数も増やす。スタートアップのガクシーという企業では、寄付の運用益で持続可能な給付型奨学金をつくるという、革新的な取り組みをされている。民間による給付型奨学金を増やしていくために、個人や企業からの寄付に対する大幅な税制優遇が必要だ。若者の活躍のため、奨学金減税を含む奨学金改革に取り組むべきだ。
高校無償化については、「低中所得層や地方の家庭には恩恵が少ない」という声や、「公立高校がなくなるのでは」という懸念の声が全国から寄せられている。
公明党は「無償化さえすればよいのではない。多様な子どものニーズに合わせ、質の高い教育がなければ、選択肢や可能性は広がらない」として、地方の高校生の学びを支える「公立高校の支援」や、授業料以外の教科書代や制服代などを支援する「高校生等奨学給付金」の低中所得層への支援を訴えてきた。
経済的に苦労している家庭、弱い立場にある子ども、過疎化が進む地方の公立高校への支援なくしては、高校無償化の目的は果たされないのではないか。単なる無償化ではない、多様な子どもたちのための質の高い高校教育改革について、首相の考えを伺う。
■年少扶養控除、復活すべき
未来の宝である子どもたちを社会全体で育み、子育てに喜びと希望が持てる社会を実現することが政治の責任だ。公明党は、子どもが生まれてから社会に巣立つまでの無償化をめざし、支援策の充実に一貫して取り組んでいる。一方で、物価高と実質賃金マイナスが続く中で、家計、特に子育て世帯の経済的負担は一段と増しており、「子育てへの経済的負担が大きい」との声が後を絶たない。加えて、想定以上のスピードで少子化も進んでいる。こうした国内の状況を踏まえれば、子育て支援において、次なる一手をちゅうちょなく実行する必要がある。
多くの子育て世帯の負担をさらに軽減するため、今年度の税制改正で維持された高校生世代の扶養控除を来年度以降も継続するとともに、年少扶養控除を復活させるべきだ。また、首相は大臣への指示書で、子どもの貧困対策と明示された。物価高でお米も買えず、衣替えもできない子育て世帯への具体的な緊急支援も検討すべきだ。
さらに、「妊娠・出産の費用や心身への負担が大きい」との声にも応えるため、妊婦健診や出産費用の自己負担をゼロにするための施策とともに、産後うつや孤立を防ぐための産後ケアの充実などを進め、全ての妊婦が安心して出産できる環境を整備すべきだ。
深刻な人手不足に直面するわが国では、一定の範囲内で外国人材の受け入れを進めている。現在、介護や製造業などさまざまな分野で外国人材が活躍し、地域活動にも参加するなど、日本経済や地域社会を支える不可欠な存在となっている。
一方、受け入れ拡大に伴う文化の違いによる摩擦やルール違反などの課題に対して、人々が不安や不満を抱いているのも事実だ。厳格な対応に加え、必要な対策の強化や制度の見直しも必要だ。公明党は、感情的な排斥ではなく、「安全・安心」という土台の上に、日本人と外国人が互いを尊重し、安心して共に暮らせる環境整備を進めるべきと考える。
そのためには、「消極的な寛容」にとどまってはならない、と考える。さもなければ、社会に緊張が高まったときに、排他主義を食い止めることが難しくなると危惧するからだ。大事なのは、同じ人間として向き合い、互いの尊厳を信じ合う、「積極的な寛容」ではないか。対立や偏見を根絶し、互いの尊厳を信じ合う、真の「多文化共生社会」を構築するためには何が必要か。首相の人権文化に対する考えは。
■(外交・安全保障)防衛力強化、国民理解が不可欠
第五に、世界の平和と安定を図る外交・安全保障について伺う。北東アジアの安全保障環境の厳しさが増す中、高市政権は「強い日本」の実現を掲げ、防衛費のGDP(国内総生産)比2%目標の達成時期を前倒しすることや、安保関連3文書の改定を進めようとしている。必要な防衛力を高めるための整備は重要だ。しかし、防衛費の増額については、その規模や時期ありきではなく、中身を詰める必要がある。物価高が進む中、防衛費増額は国民生活や財政に大きな影響を与える。政府はなぜ必要なのか、財源をどのように捻出するのかを明確にし、丁寧な説明を通じて国民の理解を得ることが、防衛力強化には不可欠だ
国家安全保障戦略で最上位に位置付けられたのは「外交」だ。防衛力だけを強化しても、真の安全保障にはつながらない。軍事的な緊張を高めるのではなく、人間同士の対話という「ソフトパワー」こそが、国家間の対立を超えて協調を生み出す鍵だ。不測の事態を未然に防ぐためにも、多国間対話による信頼関係の構築が極めて重要だ。
公明党は、日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮などを参加国とした新たな常設の対話枠組みとして、大使級が常駐する「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設を提案している。平和国家・日本こそが、この機構の創設を主導すべきだ。
この機構では、はじめから安全保障の核心から入るのではなく、まずは防災・災害救援・気候変動など共通課題での協力を通じて、参加国の信頼を積み重ねるアプローチが現実的だ。実現に向け、公明党は既に国会質問や政府への提言を重ね、米国や中国の政治関係者への働き掛けも進めている。今後は、党派を超えて議論を深めていきたいと思う。前首相は「実現に向けて努力したい」と明言したが、「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設について、首相の答弁を求める。
最後に、国民の命と暮らしを守る「生活インフラの安全保障」について伺う。埼玉県八潮市の道路陥没事故を受けて行われた下水道の全国特別重点調査では、原則1年以内の速やかな対策が必要な区間が全国で9月末時点で約75キロメートルに上り、空洞も複数確認された。尊い人命が失われ、今もなお健康被害を訴える方がおられる事故の教訓を生かさねばならない。
公明党は、道路、橋梁、上下水道、電気・ガス・通信網などの生活インフラを、災害や老朽化リスクから守ることを「生活インフラ安全保障」と位置付けて、強力な対策を講じるべきと考える。予防保全型投資の拡充、デジタル技術の高度化、自治体への財政・技術支援の強化など、国が責任をもって、災害・老朽化対策を推進すべきだ。
結びに、一言申し上げる。多党化の時代を迎える中、わが国に山積する難題を解決するには、国民の信頼回復と、対立を超えた責任ある政治が不可欠だ。これまでも与野党で議論を積み重ねてきた選挙制度や社会保障、外交安全保障など国の根幹に関わるテーマは、丁寧な政策協議が求められる。与野党それぞれの責任と覚悟が必要だ。これからも公明党は、「大衆とともに」との立党精神を胸に、国民の幸福と世界平和の実現に全力を尽くすことをお誓いする。
■高市首相の答弁(要旨)
<持続的な賃上げ>賃上げ促進税制については、物価や中堅・中小企業も含めた賃上げの状況などを丁寧に見極めながら検討を深めていく。
<社会保険料の引き下げ>高齢者の負担のあり方についても検討を進め、これらを通じ、現役世代の保険料負担の抑制につなげていく。
<公平な応能負担へ>マイナンバーを通じた資産状況などの把握の必要性や手法について、国民の理解を得ながら進めていく必要もある。
<不記載問題の真相解明>それぞれの議員が説明責任を尽くしてきたと考える。副大臣、政務官については、適材適所の人事を行った。
<高校無償化>高校無償化に加え、高校生等奨学給付金の低中所得世帯への拡充を図る。高校教育改革に関するグランドデザインを今年度中に提示し、各都道府県が策定する計画に基づく取り組みを支援する交付金などの仕組みの構築に取り組む。
<北東アジア対話枠組み>公明党が策定した「平和創出ビジョン」において「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設が提案されていることは承知している。この地域において信頼醸成を行っていくことは有益だ。国際情勢をよく見極めつつ、地域の安全保障のあり方に関する検討を深めていく。










