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【主張】相次ぐクマ被害 政府も本腰入れ住民の安全守れ
クマによる人身被害が相次ぎ、今年度の犠牲者は12人に達した。過去最悪だった2023年度の2倍となり、極めて深刻である。
被害は北日本で目立つ。公明党は北海道本部が対策本部を設置したほか、佐藤英道衆院議員が札幌市で、地元市議と共に住民の不安や要望を聴く懇談会を開催。参加者から「とにかく出歩くことが怖い」との切実な声が寄せられたように、クマの出没が多い地域では住民の不安が高まっている。地域の安全を守る体制を構築せねばならない。
政府は10月30日に閣僚会議を開き、木原稔官房長官が緊急の対策パッケージを11月中旬までに取りまとめるよう、関係省庁に指示した。今後、警察によるライフル銃を使用した駆除や、狩猟免許を持つ自治体職員「ガバメントハンター」の確保などを進める方針だ。
また、防衛省は秋田県からの要請に応える形で、きょう5日から自衛隊を現地に派遣する。銃器を使って駆除することはせず、捕獲に使う箱わなの輸送など後方支援に当たる。
9月には改正鳥獣保護管理法が施行され、自治体の判断で市街地での「緊急銃猟」が可能となったが、駆除を引き受ける民間の猟友会では会員の高齢化が進み、担い手不足は全国的な課題だ。さらに、クマに襲われる危険性や被害が増えている現状を鑑みれば、猟友会頼みの状況は脱却する必要があろう。政府は本腰を入れて対策を進めてもらいたい。
一方、緊急銃猟の際は、近隣住民の安全を確保する必要があり、実施可能な場面が限られることが想定されるため、そもそも市街地に出没させない対策が重要だ。餌となる生ごみを屋外に放置しないことや、農地に電気柵を張るなど、クマを人の生活圏に寄せ付けない環境整備を進めたい。
住民に対する自治体からの情報発信も大切だ。緊急銃猟を安全に実施するため住民の協力を得られるよう平時からの説明を徹底するほか、クマ出没時の適切な対応の周知など意識啓発を一層強化してほしい。









