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コラム「北斗七星」
10月から始まった本紙連載小説「鬼才」の作者・赤神諒さんのデビュー作に、現在の大分県地方を拠点に戦国の九州で覇を唱えた大友氏のお家騒動を描いた『大友二階崩れ』がある◆その主人公で大友家の重臣・吉弘鑑理の姿に感動を覚えた。子が親を殺し、家来が主君に取って代わるいわゆる「下剋上」の時代に逆行するように、酷薄な大友氏への忠義に徹し、不器用な世渡りをする姿が、有力な同僚だった戸次鑑連らを動かし、結果として所領を保った顚末は興趣をそそる◆懊悩しながらも義を貫いていく姿は孫である立花宗茂にも受け継がれたのか、関ケ原の戦いで西軍に属した宗茂は、改易されながらその後旧領を回復した唯一の大名となった。義にこだわる難しさは現代でもしばしば目にする◆ほかにも、戦国の四国を駆け抜けた悲劇の若武者・長宗我部信親を描いた『友よ』など歴史のはざまに沈む「知る人ぞ知る」魅力ある人物にスポットを当てた作品も興味深い◆その赤神さんが、今度は明治浪漫派の天才画家であり大きな魚を担いで歩く裸形の漁師らをモチーフにした代表作「海の幸」(重要文化財)などで有名な青木繁を本紙でどう描くのか。楽しみにしながら注目している。(唄)









