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動物看護師が国家資格に
12月から一部施行
公明党の強力な推進で今年6月に議員立法として成立した「愛玩動物看護師法」が12月1日から一部施行され、動物看護師の国家資格化に向けて試験機関の指定など環境整備のための準備が本格的に進む。獣医療の分野で活躍する動物看護師の現場を訪ねた。
診療補助など獣医支える役割を担う
糖尿病の小型犬を診察する左向獣医師(右端)と動物看護師の柚原さん(左隣)ら=日本獣医生命科学大学付属動物医療センター
動物看護師は、獣医師の指示の下で診療補助に当たる。動物の病気や症状に応じて、さまざまなケアを行う知識と技能が求められる。診察時には動物が動かないよう保定したり、手術のサポートや入院している動物の世話、時には飼い主に対し、しつけや飼育のアドバイスを行うなど、業務内容は多岐にわたる。
これまで、動物病院で働く動物看護師になるためには、獣医師や医師、看護師のような公的な資格は必要なく、民間の認定資格しかなかった。今回の「愛玩動物看護師法」で、動物看護師が12月1日から国家資格として定められることで、今後、従来の業務に加え、獣医師の指示を受けて動物看護師が採血や投薬、カテーテルによる採尿などの医療行為も可能になる。
「専門性認められ、うれしい」
「きちんとした専門職として認められることになって、うれしい」。こう語るのは、日本獣医生命科学大学付属動物医療センター(東京都武蔵野市)で動物看護師として働く柚原亜紀さんだ。
同センターでは、糖尿病や骨折、がんといった人間と同じような症状で苦しむ犬や猫の診療を行っている。1日の診察数は約50件、手術数は4~5件に上る。50人程度の獣医師に対し、動物看護師は現在15人を数える。同大獣医保健看護学科で学科長を務める左向敏紀獣医師は、「動物たちに優しく接し、また飼い主の感情に寄り添って話を聞いてくれる動物看護師は、なくてはならない存在だ」と強調する。
国の“お墨付き”を得ることで、動物看護師を志す学生らの意識向上にも期待が高まる。同大学の獣医保健看護学科に所属する4年生の倉方綾子さんは「一人前の動物看護師として多くの命を救えるよう、勉強を一生懸命頑張りたい」と目を輝かせる。同大学の清水一政学長は「未来の獣医療を担う若者たちにとって、夢のある職業としての認識が広がってほしい」と語った。
海外、すでに実現
ペットフード協会の調査によると、現在、国内の犬や猫の飼育頭数は約1800万匹に上る。15歳未満の子どもの人数よりも多いのが現状だ。
医療の質向上に高まる期待
今やペットを“家族同然”と考える価値観が広がり、人間と同様に高水準の医療提供を求める声も高まっている。一方、海外では、アメリカやイギリス、オーストラリアを中心に動物看護師が国家資格として認められている。日本動物看護職協会の横田淳子会長は、「アジア初の国家資格化によって、動物看護師に求められる社会的役割と期待は一層大きくなる」と指摘する。
早ければ2023年にも第1回の国家試験が実施される。今後、動物看護師の業務範囲や、受験に必要な実務経験などに関しての議論が進む予定だ。
受験資格は、大学や専門学校で動物看護の専門技術や知識を学ぶことが必須となる。一方、現役で働いている動物看護師については、経過措置として実務経験5年以上の人を対象に、事前に講習会などを受けることで受験資格が与えられる見通しだ。
プロジェクトチーム設置など強力リード
党獣医師問題議員懇話会 高木美智代 幹事長(衆院議員)
動物看護師は、民間主体の取り組みとして資格の統一化や共通の教育カリキュラムの整備などが進められてきたが、技術的水準の確保や、動物看護師のキャリアに基づく就労環境の整備などが大きな課題となっていた。
こうした背景から、公明党は動物看護師の役割にいち早く注目し、国会の場で繰り返し国家資格化の重要性を主張。18年5月には、党内にプロジェクトチーム(PT)を設置し、関係団体から要望を聞くなど精力的に議論を進めてきた。法案作成についても超党派議員連盟の中で取りまとめ役を担い、協議をリードしてきた。
人と動物が共生する豊かな社会の実現をめざす上で、獣医師と動物看護師による“チーム医療”のさらなる充実は必要不可欠だ。制度の円滑な実施と動物看護師のさらなる活躍を後押しできるよう、今後も取り組みをしっかりと進めていく。