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【主張】パワハラ防止 働く人を守るのは企業の責任だ
パワーハラスメント(パワハラ)を根絶する機運を高めていく契機とすべきだ。
厚生労働省は20日、パワハラの定義や企業に求める防止策の具体的内容を盛り込んだ指針案を労働政策審議会の分科会に示し、了承された。5月に成立した改正労働施策総合推進法に基づくもので、年内にも正式決定し、大企業は2020年6月、中小企業は22年4月から義務化される。
18年度に労働局などが受けたパワハラ関連の相談は約8万2000件に上った。前年より約1万件増え、労働相談の中で7年連続最多だった。19日には、日本を代表するトヨタ自動車の社員が自殺したことに関し、「上司のパワハラが原因」として労災認定されていたことが判明した。
問題は深刻化しており、政府として対策を進める必要があることは言うまでもない。
パワハラの定義について指針案は、優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものと明記している。
その上で「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」など六つの類型を示し、具体例として「他人の前で大声で威圧的な叱責を繰り返す」「人格を否定するような言動を行う」「意に沿わない労働者を仕事から外す」ことなどを列挙している。
どういう行為がパワハラに当たるのかを例示したことは評価したい。ただ、重要なのは実効性の確保である。
指針案を巡っては、「業務上の指導との線引きが難しい」との企業側の声を受け、厚労省が、パワハラに該当する例に加え、該当しない例も示したのに対し、労働者側が、該当しない例が拡大解釈されパワハラ逃れにつながりかねないと反発した経緯がある。
最終的に、指針案で示した例が全てではなく、通達やパンフレットを通じて企業に防止策の徹底を図る考えを厚労省が示したことで、労使双方が合意した。企業によってパワハラに関する捉え方が異ならないよう、政府は丁寧な周知に努めなければならない。
何より問われるのは、企業側の姿勢であろう。どこまでも弱い立場の労働者を守るという視点から対策に取り組むべきである。