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【主張】包括的核実験禁止条約 発効に向けた取り組み強化を
宇宙、大気圏、水中、地下など、いかなる場所であっても核爆発を伴う実験を禁じる「包括的核実験禁止条約」(CTBT)が1996年に国連総会で採択されてから、来年で30年という大きな節目を迎える。
だが、CTBTはいまだに発効していない。新たな核兵器を製造できなくする核実験の禁止は、核軍縮を進める重要な措置の一つであるだけに、CTBTの発効を急ぐべきである。
注目したいのは、先月26日に米ニューヨークの国連本部で、批准国などが参加するCTBT発効促進会議が開かれたことだ。
現在、178カ国がCTBTを批准している。ただ、発効には核兵器保有国と原子炉があるなど潜在的な核開発能力を持つとみられる国を合わせた「発効要件国」の批准が必要で、44カ国がそれに該当する。
発効要件国のうち、CTBTを批准しているのは日本や核兵器保有国の英国とフランスなど35カ国だ。CTBT発効促進会議では、米国、ロシア、中国、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル、イラン、エジプトの9カ国に批准を促していくことで合意した。
また、同会議に参加した岩屋毅外相は、CTBTで禁止された核実験が行われていないか監視する国際監視制度(IMS)を強化することが重要だと訴えた。
IMSとは、核爆発に伴い発生する地震や、キセノンなどの放射性希ガス、水中音波、微気圧振動を検知する観測所を世界中に設置した国際体制のことだ。現在、日本を含む89カ国の337カ所に設置されており、核兵器保有国もその運用に協力している。
IMSは核爆発の威力が1キロトン以上の実験なら、世界のどこで行われても検知可能だ。しかし、米国は既に、爆発力を抑えた、わずか0.3キロトンの低出力核弾頭を持っている。中国とロシアも同様の核弾頭を保有していると疑われている。
低出力核弾頭開発に向けた核爆発実験を現行のIMSでは検知できない恐れがあり、検知能力を強化する取り組みも加速すべきだ。









