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【主張】小型武器問題 「人命を救う軍縮」基金が重要に
今もなお続く世界各地の紛争で、最も頻繁に使われ、多くの人命を奪っているのが、自動小銃などの小型武器だ。小型武器による死者は年間約70万人に上ると推計されており、「事実上の大量破壊兵器」とも呼ばれている。
だからこそ、国連のグテレス事務総長は、小型武器の軍縮を「人命を救う軍縮」と位置付けた。この推進で、日本がリーダーシップを発揮していることを評価したい。
今月6日の国連総会第1委員会(軍縮・国際安全保障)で、小型武器のテロリストへの輸出などの非合法取引を根絶するための決議が採択された。日本、コロンビア、南アフリカの3カ国が共同で提出した決議である。
特筆すべきは、この決議の中で、「人命を救う軍縮」基金の重要性が確認されていることだ。グテレス事務総長が昨年5月に公表した、軍縮を巡る新たな課題に関する報告書(軍縮アジェンダ)の提言を受けて、国連内に設置されたものである。
同基金は、小型武器軍縮に向けた包括的な取り組みを支えるために運用されている。
小型武器軍縮はこれまで、武器に製造番号を刻印し、その流通経路を追跡できるようにすることで非合法取引の実態を解明するというような、武器製造国の軍備管理の視点から対策が講じられてきた。
「人命を救う軍縮」では、従来の取り組みに加え、紛争地の復興などの平和構築も小型武器軍縮に含めている。
例えば、紛争地に流通した武器の回収と破壊や、武器の不正取引を禁止する法制度の整備の支援だ。「人命を救う軍縮」基金は、そのために活用される。紛争地の被害者の視点に立った軍縮であり、極めて重要だ。
そして、日本は、同基金に2億2000万円を拠出した最大の資金拠出国である。こうした取り組みを財政面から支える意義は非常に大きい。
グテレス事務総長は「2017年の世界の軍事支出は約180兆円。これは、紛争などで苦しむ国の人道支援に必要な額の80倍だ」と嘆いた。
軍備ではなく軍縮に、より多くの資金が集まる――そんな「パラダイムシフト」(革命的な大転換)の原動力に、日本はなるべきだ。