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2025年9月11日

コラム「北斗七星」

「さよなら、のない別れ」と「別れのない、さよなら」を「あいまいな喪失」と呼ぶ。家族や大切な人が災害や事件、事故で行方不明となると、人は心が整理できず不安定になる。米国の社会心理学者ポーリン・ボスの著書『あいまいな喪失とトラウマからの回復』(誠信書房)で知った◆2001年9月11日、同国で起きた同時多発テロの後、行方不明者の家族を支援した経験から書いたという。行方不明となった人は心の中にいても、その体は見つからない。この「あいまいな喪失」では、残された人の心は生と死の「両方向に引っ張られ」ストレスは極めて高くなる◆残された人の心の傷を癒やすものは何か。ボス氏は<他の遺族や慰霊碑を見に来た多くの人たちと一緒に物語を共有する>ことを挙げている◆東日本大震災では2520人が今も行方不明(警察庁発表)。「夫が好きな日本酒を捧げ歳月の移り変わりを写真に撮ります」。宮城県南三陸町の防災対策庁舎で津波にのまれ行方不明となった町職員、三浦毅さんの妻ひろみさんは毎月11日、庁舎を訪れ、胸中の毅さんに話し掛ける◆きょうは9.11から24年、東日本大震災から14年6カ月。今も帰らぬ人たちへ、思いを寄せたい。(川)

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