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消費・賞味期限、より長く
食品ロス削減めざし国が指針改正
必要以上に短く設定を回避へ
安全係数の見直し促す
公明の訴えが反映
まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」削減へ、消費者庁は3月、食品期限表示の設定のための指針となる「ガイドライン」を20年ぶりに改正した。食品の消費期限・賞味期限をより長くする動きが広がることが期待されている。同指針のポイントとともに、政府の見直し検討会のメンバーを務めた日本女子大学の小林富雄教授の見解を紹介する。
政府が6月に発表した2023年度の食品ロスの発生量(推計値)は事業系と家庭系合わせて計464万トンだった。家庭系は233万トンで、このうち賞味期限切れなどにより手つかずのまま廃棄される「直接廃棄」は100万トンを占める。
また、農林水産省が民間に委託して食品事業者に行い、昨年2月に結果が発表されたアンケート調査では、「食品廃棄物などの可食部削減に有効と考えられる取り組み」を聞いた問い(複数回答可)に対し、「賞味期限・消費期限の延長、年月表示化」を挙げた事業者が約4割に上った。
このように、消費・賞味期限の延長は食品ロス削減の鍵を握る取り組みの一つになっており、消費者庁は今回の指針改正に踏み切った。
一般的に、消費・賞味期限は、微生物試験や理化学試験などで得た客観的な項目(指標)を基に得られた“暫定的な期限”に、品質のばらつきなどを勘案して設定された安全係数を掛けて決まる。
改正された指針では、食品の特性などに応じて、安全係数を1に近づけることや“暫定的な期限”から差し引く時間や日数を0に近づけることが、「望ましい」と明記した。さらに、加圧加熱殺菌されたレトルトパウチ食品や缶詰などについては、「安全係数を考慮する必要はない」とした。
これまで、品質のばらつきなどの変動が少ない食品の安全係数の目安は「0.8」以上とされてきたが、消費者庁は「『0.8』の考え方はもうありません」と説明している。
■表示の理解へ説明の付記も
また指針では、期限表示について「消費者がその意味を正しく理解し、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにすることが重要」だとして、「(消費期限)期限を過ぎたら食べないようにしてください」「(賞味期限)おいしく食べることのできる期限です」といった分かりやすい説明を付記するよう促している。消費者庁の調査で、賞味期限について正しく理解している消費者が約60%にとどまっている現状の改善をめざした対応だ。
今回の指針改正は、国を挙げた食品ロス削減を強力に推進する公明党の訴えが反映された取り組みだ。
公明党は2019年に「食品ロス削減推進法」制定を実現するなど、対策を一貫してリード。そうした中で、政府が23年12月に策定した「食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ」には、指針改正の方針が盛り込まれた。
食品ロスを巡り、政府は今年3月、30年度までに00年度比で家庭系50%減の早期達成、事業系60%減を新たな目標に掲げた。目標達成に向けて、今回の改正内容の周知などに取り組む方針だ。
一方、消費者は賞味期限が過ぎた食品をいつまで食べることができるかを知ることができない。食べられる期限の目安について、賞味期限が近い未利用食品などを引き取る「フードバンク」からも情報開示を望む声が上がっており、指針には事業者ができる範囲で情報提供に努めるよう盛り込んだ。今後、具体的な方法などを議論していく必要がある。
いつまで食べられるかを示す方法など議論必要
日本女子大学 小林富雄教授
日本の食品衛生行政は戦後から規制強化の連続だった。その歴史を踏まえると、今回の緩和は画期的な一歩だ。食品期限が延びれば当然、販売期間も延びるため、食品ロス削減につながる可能性は十分に高い。
これまで安全係数は「0.8」という言葉が一人歩きしていた。一律に掛けた方が商品化にかかる時間を短縮でき、企業が次々と新商品を市場に展開できる側面もあった。
ただ、何でも安全係数を1に近づければよいというわけではない。食品の特性に応じて科学的・合理的にきめ細かく設定することが求められるようになっていると理解すべきだ。企業の今後の対応に注目したい。











