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コラム「北斗七星」
『満蒙開拓青少年義勇軍体験記』を手にした。宮城県旧中新田町の鈴木昭作さん(享年82歳)が残したメモを長男の忠司さん(71)がまとめたものだ◆「五族協和」の旗の下、満州(現中国東北部)の開拓と警備に8万6千人の少年が駆り出され2万人が命を落とす。1945年(昭和20年)8月9日、ソ連が中立条約を破って侵攻し「王道楽土」は地獄と化した◆鈴木さんは左足を銃撃され、傷口にウジがわきながらも逃避行を続ける。「国と国との憎しみはあったが人間対人間には、何の恨みもない」と松浦を名乗る朝鮮人に助けられた◆収容所で飢えと極寒に希望を失った鈴木さんは、出会った中国人の白翰臣さん(享年62歳)宅に住み込みで働き、命をつなぐ。帰国の際、白さんは心から無事を願い餞別を贈った◆終戦から34年、鈴木さんは一時帰国した残留孤児に、白さんへの手紙を託す。すると「アジアの平和実現へ、友情の花を永く咲かせ続けましょう」と返事が届き、交流を重ねた◆体験記を読み、すれ違った中高生に“鈴木少年”を重ねると胸が痛んだ。日本は政党政治の瓦解、世界からの孤立で戦争へと突き進み、80年前、破局に至った。歴史と向き合おう。同じ轍を踏まぬために。(川)









