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公明党結党55年に寄せて
日本政治安定に導く役割
庶民に寄り添う立党精神に意義
一橋大学 中北浩爾教授
公明党の存在意義は、「大衆とともに」という立党精神にある。大企業の経営者や地域の名士ではない、労働組合に組織される恵まれた勤労者でもない、そうした庶民に力を与え、平等な社会をつくる役割を地道に果たしてきた。
公明党が誕生した1964年は、高度成長の真っ只中だった。現在の中国も同じだが、経済成長は格差を生み出し、政治を不安定化させる。公明党は恵まれない状況に置かれていた人々を組織化し、中道に導くことで、日本政治を安定させる役割を果たした。
日本国憲法に体現される「平和と民主主義」の理念は、ともすれば観念的に追求されがちだが、それを具体的な実践を通して現実のものにしてきたのも、公明党だ。庶民の常識に基づく平衡感覚こそが、それを可能にしたのではないか。
いわゆる55年体制が崩壊した1993年、公明党は初めて政権に参画する。そして、さまざまな模索を経て、99年に自民党と連立を組む。党員・支持者や議員の間には、国政で長らく対立してきた自民党との連立には消極的な意見が強く、非常に重い決断だったという。
自公政権の20年は、決して順風満帆ではなかった。自民党とはせめぎ合いが続いたし、2009年には政権からの転落も経験している。しかし、自民党との間で選挙協力や政策決定の仕組みを整え、信頼関係を積み重ねてきた。
その結果、自公政権は唯一の安定した連立の枠組みとして、現在、揺るぎないものとなっている。それには、公明党が福祉の面ではアクセル役として、また、平和を守るためのブレーキ役として、自民党の足らざるところを補っていることが大きい。
連立与党としての公明党は、野党時代とは違った形で、日本政治に安定の契機を与えているといえる。世界的にポピュリズム(大衆迎合主義)の嵐が吹き荒れる現状を見るにつけ、そのことの意義はいくら強調しても、しすぎることはない。
今後も権力の座に驕らず、自民党との緊張関係を保ち、「平和の党」「福祉の党」として公明党らしさを失わないでいただきたい。「大衆とともに」という立党精神を堅持し、小さな声を聴く力を高める。国民は、そんな公明党に期待を寄せている。