ニュース
コラム「北斗七星」
ローカル線で山間部へ行くと、山や谷の斜面に一枚、また一枚と連なる「棚田」を目にする。あぜの曲線が織りなす四季折々の風景は実に美しい。稲刈りが終わった今の時期、LEDで棚田をライトアップする地域があり、幻想的な風景で観光客を魅了する◆棚田をよく見ると、あぜの手入れが行き届いている。草が生い茂っていたり、コンクリートであったならば絶景は生まれない。だが、山肌の狭い土地での農作業は困難を極める。一枚の面積は狭く、大型の機械は使えない。どうしても人手が必要だ◆農林水産省が全国134地区の優れた棚田を「日本の棚田百選」に認定し、今年で20年を迎えた。その中にも高齢化に伴う担い手の減少などで消滅が危ぶまれる棚田が出ている◆景観も美しいが、棚田は水を程よく蓄える。地滑りを防ぐ。多種多様な昆虫や植物を育む。これらのかけがえのない「多面的機能」を持つ。棚田の保全活動を進めるNPO法人・棚田ネットワークの中島峰広代表が本紙で語っていた。棚田は「先祖代々伝わる景観や文化と相まって、地域に残る日本の宝だ」◆今年6月、「棚田地域振興法」が成立した。棚田を「貴重な国民的財産」と位置付け、棚田地域の振興を国の責務とした「長年の悲願」(中島代表)である。今後、実効性のある支援策を展開したい。(東)