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ポイント還元制度で加速 広がるキャッシュレス決済
10月の消費税率引き上げ対策としてスタートしたキャッシュレス決済ポイント還元制度。これを機にキャッシュレス決済が可能な店舗は急速に広がっており、消費者の利便性向上や導入店舗の生産性アップ、新たな顧客の獲得につながっている。
現金の扱い減り、作業効率アップ 東京・北区
「本当に会計がスムーズになった」と語る前島さん(右)=東京・北区
「ここにピッとタッチしてくださーい!」
店主に促されて客が交通系ICカードを機械にかざすと、支払い完了を知らせる電子音が“ピピッ”と響いた。
東京都北区の十条銀座商店街でパンとコーヒーを販売する「よろづや」では、クレジットカードや電子マネーに加え、スマートフォン(スマホ)のアプリを活用したコード決済を導入し、多くの来店客に利用されている。
昼食を食べようと来店した竹本智子さんは、コード決済でパンを購入。「以前からキャッシュレス決済の存在は知っていたが、設定が面倒そうでためらっていた」(竹本さん)が、店主の前島たかえさんから還元事業について教えてもらったことをきっかけに利用を開始。「支払いが楽で助かる」と語り、現在は近くの雑貨店やスーパーマーケットでもコード決済を利用している。
「よろづや」では還元事業の開始以降、売り上げに占めるキャッシュレス決済の割合が1割程度から3割超に増加。新たな客も来店するようになったという。
利点はこれだけではない。これまで売り上げを銀行口座に入金するため、週1回は必ず銀行に足を運んでいたが、現在は隔週で済んでいる。さらに、「現金を扱うケースが減ったことで会計が非常にスムーズになり、作業スピードにも良い影響を与えている」と、生産性の向上も実感している。
1万円超える商品の購入にも 東京・杉並区
「お客さまへのサービスだから」と語り、コード決済の端末を操作する城石さん=東京・杉並区
「お客さまに『あの店は便利だ。また利用したい』と思ってもらう上でキャッシュレス決済は不可欠と考えていた」
杉並区の高円寺パル商店街で寝具店を営む城石豊さんは、キャッシュレス決済の将来性に早くから着目してきた経営者の一人だ。
店内のレジカウンターの周囲は、クレジットカードの決済機やスマホのアプリで決済する端末が所狭しと並ぶ。「あらゆる場面でスマホが活用される時代になり、支払いでも確実に使われる」と見据え、昨年から導入を進めてきた。
導入当初は、数百円から千円ほどの雑貨の決済に使う客がいる程度だったが、還元事業スタート以降、1万円を超える布団をキャッシュレス決済で購入するケースも。
その上で、キャッシュレス決済を広く定着させるには「現在の還元事業の周知も含め、一層の啓発が必要」と城石さんは感じているという。
電子マネー、コード決済など 登録者数が大幅に増加
キャッシュレス決済ポイント還元制度は、クレジットカードや電子マネーといった現金以外の支払い方法で買い物をすると、中小の店舗で5%、大手のフランチャイズチェーンの店舗で2%のポイント還元や値引きが受けられるもの。来年6月までの期間限定で実施されている。
制度への参加を申請した店舗数は約92万店、手続きが完了して利用できる店舗は約73万店に達しているとみられ、経済産業省は「順調な滑り出し」と評価している。
実際、コンビニエンスストア大手のローソンでは、10月のキャッシュレス決済の比率が前月比25%増、前年同月比では7割増を記録した。
交通系電子マネーの登録も大幅に増えている。JR東日本のSuicaは、制度スタート前の今年8月の1カ月間の新規登録者数は3万5000人にとどまっていたが、直前の9月で48万人、10月は67万人が登録。同社担当者は「反響は大きい」と話している。
スマホのアプリなどで決済するコード決済も急拡大しており、ソフトバンクグループ傘下の「PayPay」の登録者数は10月1日現在で1500万人を突破した。
導入は顧客獲得のチャンス
高円寺パル商店街振興組合理事 ITコーディネータ 上原正氏
10月の事業スタート以来、決済事業者独自の優遇サービスも手伝って、私たちの商店街ではキャッシュレス決済の利用客数が2倍を超えるなど大きな反響を感じている。
今回の事業は、商店街の振興策としても活用すべきだ。店側にとっては決済手数料の負担で利益が減る可能性はあるものの、キャッシュレス決済の早期導入は未導入店舗から顧客を獲得するチャンスとなり得る。
ただ、課題もある。店側がキャッシュレス決済を以前から導入していても、ポイント還元の対象店になるには申請が必要だが、一部の決済事業者は店側にこうした情報を十分に提供していない。申請方法も煩雑なケースが多い。申請しても決済事業者における登録が追い付かず、還元サービスがスタートできていない店舗は少なくない。政府や事業者は全力で対応してほしい。
今後もキャッシュレス決済は広がるだろう。未導入店舗は利便性の低い店舗と判断され、顧客が離れる危機感を持つべきだ。店側も決済の電子化に対応する姿勢が必要だ。









