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【主張】復興庁10年延長 きめ細かい支援が被災地に必要
「心の復興」「人間の復興」を成し遂げるとの決意を込めた判断であると評価したい。
政府は、2021年3月末までとなっている復興庁の設置期限について、31年3月末まで10年間延長することを柱とする東日本大震災の復興基本方針の骨子案を公表した。復興事業に充てる震災復興特別会計や、被災自治体を財政支援する震災復興特別交付税も維持する。
東京電力福島第1原発事故への対応でも、引き続き国が前面に立って取り組むとした。廃炉・汚染水対策や風評による農水産業の低迷などに苦しむ福島を思えば当然だ。全体としても、財政上の枠組みも含め体制を維持したことは被災地の安心に通じよう。
復興庁は、当時野党だった公明党が発災直後に提言したことを契機に、翌12年2月に発足。縦割り行政の弊害を打破し、復興政策の司令塔として他省庁より上位に位置付けたことで、前例のない手厚い支援につながった。
政府は今後、年内に基本方針をまとめ、来年の次期通常国会に関連法案を提出する。
ここで強調したいのは、復興庁存続の意味するところが、「現状維持」に終わってはならないということだ。
今なお、約4万9000人が避難生活を送っている。月日の経過とともに、被災者の課題は個別化・多様化し、生業の再生や地域コミュニティーの再構築、心のケアなどきめ細かい支援の重要性が増している。復興庁の責務がさらに重くなっていることを肝に銘じ、これまでの歩みを総括した上で、寄り添う体制を一層強化する必要がある。
今回の骨子案で注目すべきは、震災の復旧・復興の過程で得た知見やノウハウを自治体や関係機関と共有する機能を復興庁に新たに追加するとしていることだ。
自然災害による甚大な被害が全国で相次ぐ中、未曽有の国難と呼ばれた3.11の教訓を、各地の防災・減災対策に生かすべきであることは言うまでもない。震災の風化を防ぐことにもつながろう。
こうした中、福島県では、“東北復興選挙”の掉尾となる県議選の投票日があす10日に迫る。福島復興の要役を担うべく、公明の4候補は断じて負けるわけにはいかない。