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【主張】シリア和平 政権と反体制派の和解実現を
「今世紀最悪の人道危機」と呼ばれるシリアの内戦。2011年3月にアサド政権と反体制派との紛争が激化して以降、8年間で死者は37万人を超え、人口のほぼ半分に当たる1200万人以上が住む場所を失った。
そのシリアが、ようやく和平への一歩を踏み出した。血塗られた紛争を終息させ、今後の国家再建の道筋を明らかにする新憲法の制定に向けた「シリア憲法起草委員会」の初会合が先月30日、スイスのジュネーブで開かれた。
アサド政権と反体制派の代表が初めて一堂に会して対話する貴重な枠組みを、国際社会が全力で後押しすべきだ。
同委員会は、アサド政権の後ろ盾となっているロシア、同政権と同盟関係にあるイラン、反体制派を支援するトルコの3カ国が主導し、国連の仲介で9月23日に設立。アサド政権と反体制派からそれぞれ50人と、シリアの市民団体などから国連が選出した50人の計150人で構成される。
シリア内戦の民間人の死者は約10万人で、そのうち女性が1万3000人を超えるというから、同委員会のメンバーの3割が女性であるという点も評価したい。あくまでも紛争に苦しむ民間人の立場から、和平協議を進めることが重要である。
同委員会の設立に踏み切れた理由として、内戦でアサド政権の優位が決定的になったことが大きいのは確かだが、同政権側の譲歩しようとしない姿勢に反体制側が怒りをあらわにし、初会合は紛糾した。和平で重要なのは、勝者と敗者を明確にすることではなく、「和解」であるということを強調したい。
アパルトヘイト(人種隔離)政策を廃止に導いた南アフリカ初の黒人大統領、故ネルソン・マンデラ氏は「和解の政治家」と呼ばれ、憎しみ合った者同士が互いを「赦し」、敵対心やわだかまりを解消できるよう尽力した。シリアの和平でも、この努力が求められている。
日本政府は、トルコのシリア難民支援施設の視察などの現地調査を踏まえた公明党の主張を受け、シリアの難民を留学生として受け入れ、復興を担う人材として育成する支援などを実施している。こうした支援を一層強めたい。