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核廃絶 どう実現するか
賢人会議レポートから「抑止論を対話のテーマに」
NPT再検討会議2020の成功を
核兵器を違法とし、核廃絶をめざす核兵器禁止条約(核禁条約)が2017年7月に国連総会で採択されて以降、核保有国と同条約を推進した非保有国の溝は深まっている。日本政府は双方の対話実現への“橋渡し役”を担うために外務省に双方の有識者からなる賢人会議を設置、10月21日に議長レポート(報告書)を受け取った。対話実現に何をすべきか―レポートの概要を紹介する。
めざすべき目標は
安全保障と人道法に基づく新秩序の構想
あまり知られていないが、核拡散防止条約(NPT)で核保有が認められているアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国は2000年のNPT再検討会議で「核廃絶の明確な約束」をしている。それ以前から米ロ両国は、戦略核兵器の削減などで一定の成果を上げてきたが、非保有国の多くは「NPT6条の核軍縮義務は誠実に履行されていない」と批判を続けてきた。
こうした状況の中、国連総会で核禁条約が122カ国の賛成で採択された。そのため、「核があるから核戦争が抑止できる」との核抑止論を重視する核保有国は「核禁条約は国際安全保障の現実を踏まえていない」などと反発し、よりかたくなな態度になった。
NPT加盟国の核禁条約に対する賛否の構図はイラストの通りだ。報告書はこの状態を双方の「分断」とまで表現している。
日本政府は、核廃絶に向かうためには、まず核軍縮の実質的な進展が不可欠であり、そのために「双方の対話実現をめざす“橋渡し役”を担う」と表明している。
報告書は、この“橋渡し役”を任ずる者が取り組むべき行動を具体的に示した。
その中で注目すべきは、議論の「共通の基盤」として、あえて分断の中心にある根本的な課題や問題に取り組むべきとの提案だ。報告書はそれらを「ハード・クエスチョン(困難な問題)」と呼び、とりわけ核抑止論に関するテーマを正面に据えた。
核抑止論者は安全保障を重視し、反対者は被害者を守る国際人道法を重視するなど見解の相違がある。しかし、報告書は「建設的な方法でこれらの問題を議論し、対処しなければ、各国がいかにして行き詰まりを打開し、核兵器のない世界のための共通のビジョンを発展させ得るかを見通すことは難しい」と強調。その上で「核兵器のない世界を支える安全保障上、法的・規範的な柱に基づく新たな国際秩序を共に構想する」ことを双方に求めている。
橋渡しへの課題
議論における礼節と多様な意見の尊重を
報告書は対話のあり方について、「議論における礼節を実践しなければならない。多様な見解の尊重は、全ての当事者が核の危険を低減するために協力し得る共通の基盤を共同で探求することを促進する」と訴えている。
また報告書は、双方が核抑止論によらない新たな安全保障を構想することの重要性を随所で示している。
例えば、「核兵器のない世界は、現在の世界から核兵器を差し引いたものではない。それは、国家や他のアクターが核兵器を保有する必要性を感じず、それゆえ、そのための手段を放棄した、根本的に変容した世界である」と述べている。
こうした世界の構想には、安定した国際情勢の下で核軍縮をどう進めるか、核兵器なしの安全保障は可能か、核廃絶後の再・核武装をどう阻止するか――などの問題意識を深める必要がある。報告書は、こうした議論を通し双方が、まずは核軍縮の重要性を理解し進展に向けた合意ができることを期待している。
公明党核廃絶推進委員会と青年委員会の合同会議。広島、長崎両県本部の議員、核廃絶に取り組むNGO(非政府組織)も参加した。山口代表は、報告書を来年のNPT再検討会議に反映させるよう外務省に求めた=10月31日 参院議員会館
公明党核廃絶推進委員会と青年委員会は、先月31日に合同会議を開き、報告書について外務省から説明を受けるとともに議論を交わした。
矢倉克夫青年委員長(参院議員)は、「『最後は必ず廃絶させる』ために橋渡し役をするという思いが伝わることが大事」「米ロ中への働き掛けをもっと増やし、それを国際社会に発信することも橋渡しの役割だ」と訴えた。
これに対し久島直人軍縮不拡散・科学部長は、安全保障を米国の核に依存する日本として核禁条約に署名しないとの方針を踏まえ、「現実的に何ができ、それが核のない世界にどうつながるかを立場の違う国に伝える」と述べた。









