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【主張】台風とBCP 水害に備えた計画策定こそ重要
東日本を中心に広い範囲で猛烈な大雨を降らせた台風19号は、各地で河川の氾濫による洪水などの甚大な被害をもたらした。これを教訓に、水害に備えたBCPが十分であったのか見直すべきだ。
BCPとは、自然災害などの非常事態に遭遇した際の自治体の「業務継続計画」や企業の「事業継続計画」のことである。
豪雨で千曲川の堤防が決壊した長野市には県の下水処理場があるが、泥水にのまれ、14万人以上の汚水処理ができなくなった。下水処理場を完全に復旧するには、年単位の時間がかかるという。
また、工場の操業を停止せざるを得なくなった企業も少なくない。
福島県郡山市の工業団地では、日立製作所のグループ会社やパナソニックの工場が浸水したため稼働を停止、再開を見通せない状態が続く。
民間の信用調査会社、東京商工リサーチによれば、上場企業の34社が、台風19号の襲来で建物や生産設備が浸水するなどして、事業の継続が困難になっているという。
国は、2011年の東日本大震災を機に、企業などのBCPの策定を推進している。ところが、BCPを策定していない企業は多い。
内閣府が昨年2~3月に全国約2000の企業に行った調査によると、BCP策定率は38.2%にとどまる。BCPで想定されている自然災害については、「地震」が92.0%と最多である一方、最も少ないのが「洪水」であり、30.5%だ。水害は軽視されている現状なのである。
現在、地球温暖化による海面水温の上昇が深刻視されている。この影響で、勢力の強い台風や豪雨が頻発しているためだ。今や、水害こそが最も身近な自然災害であると言っても過言ではなく、水害対策に万全を期したBCPを策定することが重要だ。
豪雨や台風による水害で、特に問題となるのは、下水処理施設が機能不全に陥ることである。国土交通省の下水道BCP策定マニュアル改定検討委員会は現在、河川の氾濫などを想定した「水害編」を新たに盛り込んだ、19年版のBCP策定マニュアルづくりを進めている。同マニュアルの公表を急いでほしい。