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コラム「北斗七星」
ユーモアか。それとも風刺か。飼い猫の埋葬を伝える黒縁のはがき。文豪・夏目漱石が門下生に送ったものだ。はがきは現存し、「御会葬」には及ばぬとも記されている◆亡くなった猫は小説『吾輩は猫である』のモデルだ。人間を観察し、「彼等は我儘なものだと断言せざるを得ない」と言ってみたり、「自己の力量に慢じてみんな増長している」と批判する。小説は日露戦争中の1905年1月に完結した(筑摩書房『夏目漱石』所収)◆動物を代用し時代を問う手法は古今東西に通じるものなのだろう。英国議会での議員の姿をチンパンジーに見立てた油彩画が競売に掛けられたと聞き、そう思った。正体不明の覆面芸術家・バンクシーが2009年に描いた作品である。落札価格が13億円にも上ったというから驚く◆絵はヤジを飛ばしたり、口をとがらせ怒るチンパンジーらで埋め尽くされている。今の議会を象徴しているとの評も。実際、EU(欧州連合)からの離脱期限が今月末なのに、いまだに「非難合戦」(トゥスクEU大統領)が続いているのだ◆バンクシーはネズミやチンパンジーをよく分身に使う(吉荒夕記著『バンクシー 壊れかけた世界に愛を』美術出版社)。狭い自己に固執せず、社会の将来を考え動く。それが漱石やバンクシーが示した、“退化”を防ぐ処方箋である。(田)









