ニュース
【主張】出産費用の無償化 安全に産める体制との両立が重要
子どもを望む家庭が安心して出産を迎えられるよう、出産費用の無償化をめざす意義は大きい。安全に産める体制を維持しながら実現することが重要だ。
出産費用に対する支援策などを議論する厚生労働省の有識者検討会は14日、論点を整理した文書を取りまとめた。公明党が提唱する出産費用の自己負担の実質無償化に向けて、2026年度をめどに制度設計を進めるよう国に求めている。
出産は、病気やけがに該当しないという理由から、帝王切開などを除いて公的医療保険の適用外となっている。経済的負担を軽減するため、子どもが生まれた世帯には出産育児一時金が支給されており、公明党の推進で23年度に42万円から50万円に増額された。
一方、医療機材や人件費の高騰などを背景に出産費用は年々、上昇する傾向にある。23年度の正常分娩の費用は全国平均で約50万7000円と、10年間で9万円近く増えた。一時金の増額により負担は軽減されたものの、賄えないケースは全体の45%に上っている。
地域による費用差も大きい。都道府県別では最も高い東京都が約62万5000円なのに対し、最も低い熊本県は約38万9000円であり、自己負担のばらつきを解消する必要があろう。
具体策の検討で焦点となるのは、安全で質の高い周産期医療提供体制の確保と無償化との両立だ。少子化で出生数が減る中、経営難の分娩施設は増えている。無償化に伴って経営の自由度が狭くなり、収支の悪化につながれば、分娩の対応を取りやめざるを得なくなる施設が出かねない。
検討会の文書では、分娩施設への「経営実態等にも十分配慮」する方針を明記した。出産費用やサービスの見える化を前提に、無償化する費用の範囲や正常分娩への保険適用、窓口負担のあり方などを検討課題としている。
今後は社会保障審議会の医療保険部会などで、検討会の論点を踏まえて具体策を詰めていく。丁寧な議論を尽くし、最適解を導き出してほしい。