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無電柱化の対応加速
電柱倒壊などの被害に遭った現場を視察する赤羽国交相(左端)ら=9月14日 千葉・鋸南町
台風15号による被害を踏まえ、赤羽国交相が表明。停電の防止や早期復旧のほか、移動空間の確保や景観にもメリット。
Q 台風15号の強風で大きな被害を受けた千葉県では、多くの電柱が倒壊し、停電が続く原因となった。
A 経済産業省の推計によると千葉県内だけで約2000本の電柱が被害を受け、最大約93万戸が停電した。昨年9月に近畿地方を台風21号が襲った際も、近畿地方を中心に1300本以上の電柱が損壊したりし、約240万戸が停電している。
今回の台風被害を踏まえ、赤羽一嘉国土交通相(公明党)は、電線を地中に埋設して電柱をなくす「無電柱化」への対応を全国で急ぐ考えを表明した。
国交省は、2016年に公明党の推進で成立した「無電柱化推進法」などを踏まえ、20年度までの3年間で、主要幹線道路を中心に2400キロ分を整備する計画だが、これを加速させる。
Q 無電柱化のメリットは何か。
A 今回の台風被害のように、電柱が道路をふさいで緊急車両の通行を妨げることがなくなる。1995年の阪神・淡路大震災では、地震に強いことも証明された。災害時の2次被害や停電の軽減、安全な歩行空間の確保、良好な景観の創出などメリットは大きい。
海外では、ニューヨークのマンハッタンのほか、ロンドンやパリといったヨーロッパの主要都市で電線が100%地中化されている。一方、日本は17年度末時点で1.25%と遅れている。東京23区でも約8%にとどまる。
Q なぜ日本での整備は遅れているのか。
A 1キロあたり5億円以上ともされる費用がネックになっている。電線や通信ケーブルをそれぞれ特殊な管に入れ、深く掘らなければならないからだ。工事費用は国や自治体、電力会社などが負担するが、電柱に比べて10~20倍かかるとの指摘もある。しかし、欧米では電線を直接埋設してコストを抑える方法が一般的だ。
このため国は、17年3月と今年3月の2回にわたって、無電柱化を低コストで導入するための手引きをまとめた。従来より浅い位置に埋める手法などを紹介し、道路管理者の自治体や電力会社に対応を促している。