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コラム「北斗七星」
ほの暗いトンネルを冷たい風が吹き抜ける。丸太が組まれた天井などから水がしたたる。静寂な空間ながら、かつては掘削機などのごう音が響いていたのだろう。北海道夕張市にある「市石炭博物館」でこのほど、中核施設である模擬坑道の一般公開が再開された◆実際の採炭現場を活用した世界的にも希少な見学施設は、国の登録有形文化財。日本の経済発展を支えた“炭都”の歴史を学べる格好の教材である。炭鉱の閉山後、全国唯一の財政再生団体となった同市が、地域の誇りとして2018年に大規模な改修をした◆わずか1年後、大きな火災に見舞われた。鎮火まで約1カ月。落盤や坑内火災など、往時の悲しい記憶を呼び覚まされた住民も多かった。公明党の国会議員と地方議員は発災直後、現地に急行。その後も復旧・復興を後押しした◆再開に当たっては、スプリンクラーやガス検知器、石炭層の温度を測る機器などを設置し、安全対策を強化。今なお、「ヤマは生きている」ことも実感させられる◆市の人口は約6000人にまで減少。それでも、計画では累積赤字を26年度までに解消する。「地域再生の象徴に」と期待される“復活”が、未来を開く一歩となることを願う。(武)