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【主張】正念場のNPT 核軍縮への「対話の場」を守れ
核不拡散条約(NPT)を今後とも機能させることができるかどうか。今、正念場を迎えている。
9日まで米ニューヨークの国連本部で開催中のNPT再検討会議の準備委員会が、核保有国と非保有国との対立だけでなく、核保有国同士の対立も加わって混沌としている。
来年開催の再検討会議を成功させ、核軍縮を進展させるためにも、協調の精神を発揮してこの準備委を成功させる必要がある。
NPTは米国、英国、フランス、ロシア、中国に核兵器の保有を認め、それ以外の国には核の平和利用は認めるが核兵器の保有を禁じた“不平等条約”だが、5核保有国には核軍縮義務を課している。
その義務の履行を確かめるため、5年ごとに再検討会議が開催されている。NPTは核保有国と非保有国が一堂に集い、核軍縮を考える貴重な「対話の場」となっている。これを守ることが、国連憲章が掲げる「国際の平和と安全の維持」にとっても不可欠である。
ところが今回の準備委は、冒頭の一般討論から非難の応酬が続いた。非保有国が保有国の核軍縮の努力不足を責めることは当然だが、今回は米ロ中3カ国が相手を名指しで非難し合っている。核軍縮に必要な安定した安全保障環境を崩壊させた責任を相手になすり付けている。さらに一般討論後のテーマ別論議では、ロシアによるウクライナに関する発言に反発した多くの外交官が議場から退席する一幕もあった。
再検討会議の準備委は今の第3回が最後だ。本来なら再検討会議の議題などを勧告案としてまとめなければならない。しかし、これまでも勧告案がまとまったことはなく、議長の責任で作業文書としてまとめられてきた経緯がある。
今回もこの歴史を繰り返し、来年の再検討会議で核軍縮への前進が見通せなくなれば、2015年、22年(コロナ禍で20年は延期)の再検討会議に続き3回連続で合意失敗となる。「対話の場」の機能不全は避けなければならない。