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【主張】孤独・孤立対策 “SOS”キャッチできる工夫を
単身世帯の増加や働き方の多様化などに伴い、家族や地域、職場における人とのつながりが薄くなり、人生のさまざまな場面で、誰もが孤独・孤立状態に陥りやすい状況にある。5月は政府が定める「孤独・孤立対策強化月間」だ。社会全体で取り組みを進めたい。
政府は4月、社会的に孤立していた状態で亡くなったとみられる「孤立死」に関する推計を初めて発表した。自宅で誰にもみとられることなく、死後8日以上経過して発見されたケースをまとめたものだ。昨年1年間で2万1856件に上り、年齢別では65歳以上の高齢者が7割を占めた。
一方、社会的孤立は高齢者だけの問題ではない。市販薬・処方薬を過剰摂取する「オーバードーズ」が若年層で広がる背景の一つには、孤独・孤立の問題があると指摘されている。
内閣府が昨年実施した調査によると、「孤独感がある」と答えた人は約4割に上った。困窮や健康状態の悪化などが、孤独・孤立をより深刻化させることもある。当事者の“SOS”を早期にキャッチできるような取り組みが重要だ。
その一つとして、地域での見守りは有効と言える。例えば、孤独・孤立に関する知識を身に付け、日常生活の中で困っている人を支援機関につなげるボランティア「つながりサポーター」の養成講座が各地で広がりつつある。支援を求める声を上げやすく、声を掛けやすい地域づくりが進むことを期待したい。
また、高齢者や若者の居場所づくりに取り組むNPOなどに対し、支援を一層充実させることも必要だ。地域で気軽に立ち寄れて、緩やかに人とつながれる場があることは、誰にも安心感を与えるだろう。
対策強化月間では、孤独・孤立に関する悩みを24時間受け付ける無料の相談ダイヤル「#9999」を、あす2日午前10時から7日午前10時まで開設する。大型連休で、行政機関などの相談窓口は閉まっていることが多い。誰でもどんな内容でも相談できるので、気兼ねなく利用してほしい。