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【主張】改正JICA法 途上国支援に民間資金の投入促す
日本は政府開発援助(ODA)を通じて70年以上にわたり、途上国の発展や国際社会の繁栄に大きく寄与してきた。他国との信頼を築く手段として、ODAが日本の大事な外交ツールであることは変わりないが、日本の厳しい財政状況を踏まえ、拡大する途上国の開発ニーズに対応していくには、時代に即してODAを一層、効果的に活用していくことが重要だ。
国際協力機構(JICA)が一元的に行っているODAの運用を効率化していくため、民間資金の投入を促すことを盛り込んだ改正JICA法が9日に成立し、17日に施行された。
改正の柱は、途上国の開発援助に日本や他国の民間資金を誘導する仕組みを作ったことだ。JICAが行う海外投融資の方法として従来の「融資」「出資」に加え、新たに「債券取得」と「信用保証」を追加した。
具体的には、途上国の企業が資金調達のために発行した債券の一部をJICAが取得し、日本をはじめ他国の投資家からの資金を誘引する。信用保証はJICAが事業リスクの一部を引き受けることで、現地の銀行を含めて融資を受けやすくするのが目的だ。途上国への投資や融資のリスクをODAの活用で低減し、民間資金を呼び込みやすい環境をつくる意義は大きい。
日本がこれまでODAの対象としてきた国では経済成長が進み、インフラ投資だけでなく地球温暖化への対応や省人化といったニーズも生まれてきている。官民一体で新たな支援体制を築き、途上国の発展と関係強化につなげてほしい。
また、改正法では途上国に対する無償資金協力について、現地政府を通じて供与してきた手法を改め、JICAが直接、現地の企業に資金を提供できる形にした。少しでも迅速な事業展開を期待したい。
近年の物価高騰などを背景に、国内では途上国への資金提供に対し不満も聞かれる。政府はこうした声も受け止め、改正法の意義や日本の国益につながるODAの役割をこれまで以上に発信していく必要がある。