ニュース
【主張】加齢性難聴 早期発見、補聴器使用に支援を
高齢者人口が増え続け、加齢に伴って耳が聞こえづらくなる「加齢性難聴」への支援の重要性が高まっている。放置して意思疎通が難しくなれば、認知機能の低下やうつ、社会的孤立につながるリスクが高まるとされており、早期の支援を強化する必要がある。
総務省が先週発表した人口推計によれば、昨年10月1日時点の総人口は14年連続で減少した一方、65歳以上は前年比1万7000人増の約3624万人に上った。うち75歳以上は70万人増の約2077万人で、ともに過去最多だった。
加齢性難聴は進行の具合に個人差はあるものの、誰にでも起こり得る課題だ。国立長寿医療研究センターによると、軽度以上の難聴がある人は65歳以上で急増し、70代前半で男性の約5割、女性は約4割を占める。
原因は音を感知する耳の奥の細胞が減るためで、根本的な治療は難しいとされる。両方の耳で高い音から聞こえにくくなる特徴があり、気付かないうちに進行する場合が多い。早期に発見して、意思疎通が難しくならないよう聞こえの改善を図ることが欠かせない。
東京都豊島区は区内在住・在勤の高齢者を対象に聞こえの健康チェックを無料で実施している。必要に応じてアドバイスや専門医への受診勧奨を行い、補聴器使用など生活改善につなげてもらうためだ。こうした取り組みを全ての自治体で行えるよう、国は事業化を検討してほしい。
金銭面で負担の大きい補聴器購入費への助成も大切だ。先行する新潟県では県内全市町村で難聴の高齢者に助成を行っているほか、公明議員の推進で独自に取り組む自治体も増えている。ただ、全国的に見れば一部であり、一層の拡大が望まれよう。
補聴器を有効に活用するには、聞こえの状態に合わせて調整を繰り返す必要があり、医師や専門家との連携、周囲の理解と協力も重要になる。国は正しい知識の普及啓発と併せて、専門的な助言の下、補聴器使用を支える環境を整えていくべきだ。