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【主張】米関税で中小支援 資金繰りと雇用維持に万全期せ
トランプ米政権の関税政策により、国内の中小企業や小規模事業者に不安が広がっている。
トランプ大統領は全面的に発動した「相互関税」のうち上乗せ分を90日間停止すると9日に発表した。だが、すでに導入した10%の一律分は継続され、自動車に発動した25%の追加関税なども維持されている。
日本は米国に対し、自動車をはじめ機械や食品などさまざまな品目を輸出しており、影響は広範囲に及ぶ可能性が高い。関税を価格に転嫁すれば売り上げの落ち込みに、企業が負担すれば収益の低下につながりかねない。政府は影響を注視し、産業や雇用を守る支援に万全を期してほしい。
特に日本経済の屋台骨である自動車産業の裾野は広い。「どれだけ米国への輸出が減り、部品の生産が落ちるのか非常に心配だ」。自動車部品を製造する企業からは不安の声が聴かれる。
連合が1日時点で集計した今春の賃上げ率は、組合員300人未満の中小組合で5.00%となり、昨年同時期を上回る勢いだった。関税措置の影響が雇用や賃金にまで至れば、中小企業に広がる賃上げの流れが断ち切られてしまう。
政府は全国約1000カ所に企業向けの相談窓口を設けている。すでに1500件超の問い合わせがあるといい、状況が刻々と変化する中で寄り添った丁寧な対応に努めてもらいたい。
資金繰り支援も重要だ。政府は関税措置の影響を受けた中小企業向けに「セーフティネット貸付」の利用要件を緩和している。資金繰りの悪化を招かぬよう、速やかに融資を実行することが欠かせない。また、関税措置は先行きが見通せないだけに、雇用調整助成金などを活用して雇用を維持していくことが大切だ。
一方で、関税措置を受けて大企業が取引先に負担を過大に押し付けることも許されない。政府は監視を強める必要がある。
公明党は中小企業を対象に全国で関税措置の影響を緊急調査する。聴き取った声を基に、必要な具体策を政府へ提案していきたい。