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コラム「北斗七星」
生きていると煩わしいことはどうしても避けられない。人として生きていくこと自体が面倒くさいもの。だが、それをどう捉えるかで随分人生は変わる。著書『人生の壁』(新潮新書)で明かした養老孟司氏の考察だ◆人に頼まれて仕方なく何かをやるのは煩わしい。それでも一生懸命やると結局は自分のためになる。それは運動すれば筋肉がつくのと同じ。筋トレはつらいが、サボらずに繰り返せば確実に筋力がつく。人間力もそうだろう。今日を精いっぱい生きること。その積み重ねを避けた人に本当の力は身につかない◆ボクシングを題材としたマンガ『はじめの一歩』(森川ジョージ作、講談社)。その主人公が口にした言葉をふと思い出した。「好きなコトしかしないというのは楽しいコトばかりというのとイコールではないよ」◆それを垣間見た覚えがある。宮崎駿監督の創作現場に密着したドキュメンタリー番組。監督は「面倒くさい」と何度もつぶやく。監督にとって好きな創作は“面倒くさい”との戦いなのだ◆それでも決して手は休めない。やがてこう漏らす。「世の中の大事なことって、たいてい面倒くさいんだよ」。細部にこだわり絶対に妥協しない監督の一言が心に染みた。(佳)