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2025年4月14日

<論壇>インフラ整備の意義

経済支える内需の要 
日本も先進国並みに投資を 
国土学総合研究所所長 大石久和

表記のようなタイトルを掲げると、「公明党は歴代国土交通相を送り、インフラ整備に力を入れてきた」との反論が返ってくると思うが、日本の歴代首相が政策としてのインフラの重要性に触れたことが無いという事実と、次に示す海外首脳の発言を見ると「なるほど」と思ってもらえるのではないか。

米国のトランプ大統領は第1期政権時代の2018年に「安全で信頼性が高く近代的なインフラを提供することを強く求める。アメリカ経済はそうしたインフラが必要であり、国民はそれを享受する権利がある」と述べ、全土に高速道路、橋、鉄道、水路を張りめぐらせると力説したのだ。

このインフラ整備政策は、大統領選挙で見たように厳しい対立をしている民主、共和両党の共同提案だったことも驚きだ。インフラ整備の重要性認識においては両党に隙間が無いという一致ぶりなのだ。

従って、バイデン前大統領もロシアによるウクライナ侵略が始まった直後の22年3月の一般教書演説では、「アメリカはインフラを構築する時だ。それは中国との経済競争に勝つための道筋となるものだ」と高らかに述べたのである。

これは米国だけのことではないのだ。英国、ドイツ、イタリア、カナダなどの首相たちも、費用を要し国民の協力が欠かせないインフラ整備の重要性を何度も国民に訴えてきている。そしてこうしたインフラが経済を成長させ、国民を豊かにして社会を繁栄させると説明してきているのである。

1995年の財政危機宣言以降、財政再建至上主義病とでも言うべき病に罹患した日本は、首相や政治家からインフラ重要性認識が出ないだけではなく、デフレ経済に陥っているというのに内需の要であるインフラ整備費を削減し続けてきた、先進7カ国(G7)で唯一の国となってしまった。

インフラ整備費(公的固定資本形成)の推移を96年を100として2022年を見てみると、米国244、ドイツ216、フランス207、英国516、イタリア188というように100を大きく上回っているのに対して、唯一日本だけが60とほぼ半減してきているのだ。

大地震国なのに震災対策も進まなかったことを意味しているし、高速道路はミッシングリンク(未整備区間)だらけで、韓国は克服したというのに暫定2車線が各地に残って正面衝突の危険を放置したままとなっている。埼玉県八潮市の大陥没事故も維持点検費用を削減してきた象徴なのだ。

そして、国が投資をしてこなかったことが、民需を喚起することもなく経済を成長させなかったために国民の貧困化をもたらしてしまったのだ。1995年の平均世帯所得が約660万円だったのに、それが2021年には545万円にも低下したことを政治は国民にどう説明するのだろうか。

1945年、兵庫県生まれ。70年、京都大学大学院工学研究科修士課程修了。同年、建設省(現国土交通省)入省後、道路局長、国土交通省・技監などを歴任。2004年に退官後は、国土技術研究センター理事長、土木学会会長などを務めた。

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