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【主張】食品ロス削減法施行 幅広い国民運動につなげたい
まだ食べられるのに捨ててしまう「食品ロス」を減らすための食品ロス削減推進法が、来月1日に施行される。食べ物を無駄にしている現状を大きく変える転機としなければならない。
2016年度に国内で発生した食品ロスは643万トンに上る。国民1人当たりに換算すると51キロで、1人分の年間コメ消費量の54キロに匹敵する。極めて深刻な実態だ。
食品ロスは、日本に限らず、世界的に見られる問題だ。全世界の温室効果ガス排出量の約8%を発生させるとも指摘されており、気候変動とも密接に関わる。
このため、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)は、1人当たりの食料廃棄量を30年までに半減するとの目標を掲げている。日本は法施行を機に、国際社会をリードしていくべきである。
食品ロス削減推進法の柱は、生産から消費まで各段階の食品ロス削減に向けた努力を「国民運動」と位置付け、国や自治体、事業者、消費者に対して自主的な取り組みを求めていることだ。
賞味期限が近づいた食品を引き取り、福祉施設などへ無償で提供する「フードバンク」をはじめ、官民を問わず多様な取り組みが行われている。食品ロス削減を国民運動に高める上で、こうした活動を一層広げる必要がある。
注目したいのがITを活用した試みだ。例えば、気象データや人工知能(AI)などを駆使して商品の需要予測を行い、生産コストを抑えて食品ロス削減に取り組む民間企業が増えている。
飲食店で売れ残った料理や食材をネット上に出品し、希望者が割安で購入できる「フードシェアリング」サービスも始まっている。このような“新しい芽”を育むことも重要だ。
超高齢社会という日本の現実にも目を向けねばならない。神戸市の調査によると、高齢の単身世帯は、ほかの世帯に比べて1人当たりの食べ残しが多い。作り過ぎ、買い過ぎが原因とされるが、売る側も少量単位の販売など知恵を絞る必要があろう。
法整備を主導してきた公明党は、食品ロス削減を幅広い国民運動につなげられるよう、さらに尽力したい。