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【主張】御嶽山噴火から5年 絶対安全はない。火山警戒怠るな
長野、岐阜両県にまたがる御嶽山が突然噴火し、死者58人、行方不明者5人という戦後最悪の火山災害が発生してから、あす27日で5年がたつ。
今も観光など地域経済に影響が残る中、今年7月から、夏山シーズンとしては噴火以来初めて、山頂への立ち入り規制が解除された。御嶽山の噴火警戒レベルが1となったことや、コンクリート製の避難シェルターの新設など安全対策が進んだことを受けたものだ。
「日本百名山」にも選ばれ、初心者でも比較的登りやすい3000メートル峰として人気の高い山である。にぎわいが戻ることを望みたい。
忘れてならないことは、御嶽山の噴火災害が残した数多くの教訓であり、全国各地で火山対策を前に進めることである。
例えば、火山周辺自治体による避難計画の策定だ。御嶽山の噴火災害が発生した当時、避難計画は法律で義務付けられていなかったため、計画を策定している自治体は限られていた。
このため2015年に活火山対策特別措置法が改正され、現在は、気象庁が常時監視する50火山のうち、住民のいない硫黄島を除く49火山の周辺190市町村に、避難計画の策定や避難訓練の実施などが義務付けられている。7月末までに105市町村が計画の策定を終えた。残る自治体も作業を急ぐべきである。
日本は世界有数の火山国でありながら、諸外国に比べ、火山活動の監視や調査、研究に携わる専門家が少ないことも課題として指摘された。
気象庁は御嶽山の噴火災害後、火山業務に関わる職員を大幅に増員し、文部科学省も16年度から10カ年で火山研究と研究者の育成を推進する計画だ。諸外国とも連携しながら、火山防災の強化に一層努める必要がある。
何より肝に銘じるべきは、火山の噴火に限らず、自然災害を前に絶対安全はあり得ないということだ。御嶽山も警戒レベル1で噴火した。
万一の事態に備えた装備の充実や避難方法の確認などは、打ち続く地震や豪雨災害にも共通する対策だ。個人による自助努力も含め、被害をどう最小限に抑えるかに知恵を絞りたい。