ニュース
“下請けいじめ”一掃へ
価格交渉を義務に
取引適正化で中小企業の賃上げ促す
公明、法改正を推進
長年染みつく“下請けいじめ”の一掃へ――。政府は、円滑な価格転嫁で中小企業の賃上げを促すため、約20年ぶりとなる下請法改正案を今国会に提出、早期の成立をめざしている。成立すれば、取引環境の適正化を図ることで価格交渉がしやすくなり、賃上げするための原資の確保が期待できる。
ポイント
●不公正な取引など商慣習を是正
●協議を行わない一方的な価格決定の禁止
●上下関係を印象付ける「下請」の名称変更
●規制対象に荷主と運送業者の取引を追加
価格転嫁を巡ってはこれまで、中小企業が大企業から仕事を請け負う場合、取引上の立場が弱く、材料費などの上昇分を価格に転嫁しにくい現状があった。
現行の下請法の運用ルールでは、価格を据え置く場合も規制の対象としている。一方で、取引の現場では価格の据え置きこそしないものの、発注側がコスト上昇分の一部しか転嫁を認めず、大半を受注側に負担させる事例が見られ、商慣習の改善は長年の課題だった。
これを受け改正案では、価格交渉を義務化し、発注者側が一方的に価格を決定することを禁止。「下請」という用語については、「親事業者」を「委託事業者」、「下請事業者」を「中小受託事業者」にするなど上下関係のない中立的な言葉に変更し、法律名も改める。規制対象については、荷物の依頼主である荷主と運送事業者間の取引を新たに追加。従来の資本金に従業員数の基準も加えることを盛り込んだ。
公明党は、今回の下請法の改正を一貫して推進。昨年3月の参院予算委員会で、西田実仁参院会長(当時)が不当な取引価格の据え置き禁止や、言葉に嫌な思いをしている事業者の声をもとに下請法の名称変更を提案した。
これに対し、岸田文雄首相(当時)は「法改正の要否を検討したい」と明言。同年5月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に関する政府への党提言にも、下請法の改正を提起していた。
名称変更の意義大きい
一般社団法人日本金型工業会 小出悟 前会長
長年の念願であり、今回の法改正を非常に嬉しく受け止めています。特に「下請」という名称変更の意義は大きく、私たち「日本金型工業会」が約17年にわたって国に訴え続けてきました。
金型製造業は、業者の規模が大きくないために大手企業と取引する際に、コスト上昇分の価格交渉をしようとしても簡単に切り捨てられることがあります。その要因の一つに、上下関係をイメージさせる「下請」という言葉の存在により、不公正な取引を助長してきたと実感しています。
こうした思いを私は昨年1月、公明党の西田実仁参院議員に直接伝えました。西田さんは私たちの言葉を真摯に受け止め、2カ月後に国会で議論。スピード感を持って動いてくれ、名称変更の道を開いてくれました。
早期成立を願うとともに、古い商慣習が是正され、互いに対等な取引ができることを期待します。