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コラム「北斗七星」
日曜朝のテレビで「喝!」と叫ぶ野球評論家を連想してしまう。明治の民権思想家・中江兆民。彼の随筆集『一年有半』には歯に衣着せぬ政治・文明批評が満載だ。伊藤博文などは「下手な魚釣り」。発売開始1年で20万部を超えた当時のベストセラーである◆彼の「生前の遺稿」だったことも売れた理由の一つだ。題名『一年有半』は、医師から咽頭がんで余命1年半と宣告されたことにちなむ。だが、内容はとても明るい。「一年半は悠久なり」。それが短いというなら「十年も短く、五十年も、百年も短い」。今を生きることが大切だと◆がんは今や2人に1人がなるといわれる。一方で治療法の進歩と検診の普及で“不治の病”から“治せる病気”へ。国立がん研究センターによると、診断から5年後の生存率は66.1%。着実に向上しているという◆本紙の読者投稿欄にも、がんの闘病体験がしばしば寄せられる。その中に、定期検診を「(がん)経験者としてお勧めしたい」とのアドバイスがあった。今月は「がん征圧月間」。「がん検診 あなたを守る 新習慣」がスローガンだ◆7月のプロ野球オールスター戦で、ある選手の勇姿が大感動を呼んだ。人間ドックで大腸がんと診断され、手術から復帰した阪神の原口文仁捕手が2試合連続本塁打を放ったのだ。「あっぱれ!」である。(東)