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「被災地の今」学び、伝える
東日本大震災8年6カ月
香川から宮城、福島へボランティアツアー
うどん作りで絆つむぐ
3・11の記憶と教訓を心に刻む
「被災地の今」を知り、伝えたい――。東日本大震災から8年6カ月を前にした8月24、25の2日間、香川県の市民有志が宮城、福島で被災地のボランティアツアーを実施した。これは被災3県の復興を応援しようと、2011年10月から活動を続けるNPO法人「東北ボランティア有志の会香川」(藤井節子代表)が企画したもの。同会のツアーは今回が19回目で、14人が参加し、震災遺構の見学や、うどん作りを通して被災者と交流した。(東日本大震災取材班)
8月23日午後7時過ぎ、高松市を出発した第19回東北ボランティアツアーの一行は、1000キロの道のりをバスで15時間かけ、翌朝10時、宮城県山元町に到着した。
東北ボランティア有志の会香川は、大震災の年から東北3県の被災地を訪れ、がれきの撤去や仮設住宅の訪問支援を行う一方、香川県内でイベントを開催し、3.11の記憶と教訓を伝えたり、被災地の物産PRを続けてきた。
同会が山元町を訪問したのは今回が7回目。仮設住宅の集会所などで開催してきたうどん教室は、この日で4回を数える。香川県立保健医療大学の学生の担当で健康体操を行った後、藤井代表が、うどんの作り方を説明した。
参加者たちは、音楽に合わせて、コシを出すため袋に入れた小麦粉の足踏みを体験。また、香川から持参した“寝かせた”生地を麺棒で転がして伸ばした上で切りそろえ、“本場の讃岐うどん”を完成させた。参加者に「卒業証書」が授与された後、ゆでたてのうどんを囲んでの懇親会が行われ、親交を深めた。
隣接する亘理町から参加した伊藤ひろさん、岩佐紀子さんは、うどんの出来に満足しながら「友だちと楽しく過ごせました。こうして遠くから心を寄せ、足を運んでくれるのがうれしい」と笑顔を見せた。
2人とも山元町の自宅が津波で流され、亘理町で再建。岩佐さんは「あの日、経験したことがない揺れだったのに、津波が来るとは思わず、すぐ避難しませんでした。2階に上がって、たまたま命だけは助かりましたが、いまは『揺れたら逃げる』です。これは、すべての人に伝えたい」と力を込めていた。
うどん教室に先立ち、一行は、同町の幼稚園に通っていた一人娘を津波で亡くした髙橋ひろみさんから話を聞いた後、児童ら90人が屋上に避難し、助かった旧中浜小学校の校舎を見学。山元町生涯学習課の八鍬智浩班長は、同校舎が震災遺構として整備されている状況を説明。30年前、地域住民の声を聞き、津波から逃げられるよう2メートルほどかさ上げして、校舎が建てられた経緯に触れ「災害から住民の命を守るため、皆さんも香川に帰ったら、地域で防災について、よく話し合ってください」と結んだ。
なお一行は翌25日、福島県入りし、浪江町で「浪江まち物語つたえ隊」の岡洋子さんの話を聞いたほか、富岡町の災害公営住宅でも「うどん教室」を開催した。
参加者の一人、横田愛夏さんは「震災から8年が過ぎ、町は元通りになっていると思っていましたが、実際に被災地に来てみると復興はこれからだと感じました」と感想を述べ、「災害が起きた時、どう行動するか問題意識を持ちながら、看護師になる勉強を続けます」と決意していた。
ツアーを企画した藤井代表は「東日本大震災のことを報道で目にする機会が少なくなり、関心が薄れているのでは」との懸念を表明。その上で「災害を“わがこと”と捉えるため、一人でも多くの人が被災地を訪れ、被災した人の生の声を聞いてもらえるよう活動を続けたい」と語っていた。