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【主張】高額療養費の見直し 長期治療に配慮し安全網維持を
高額な治療を受けた際、患者の自己負担を一定額に抑える「高額療養費制度」は、医療のセーフティーネット(安全網)として極めて重要な役割を果たしている。がんや難病などの疾患で長期にわたって治療を続ける人に配慮し、制度の見直しを進めるべきである。
政府は今夏以降、自己負担の上限額を段階的に引き上げる方針を決定し、昨年末に見直し案を公表した。
具体的には、今年8月から2027年8月にかけて3段階に分けて限度額を引き上げる。年収約650万~約770万円の所得層では、最終的に月の限度額が約5万9000円上がる一方、全所得層の保険料負担は1人当たり年間1200~5600円減るという。
高齢化の進展に伴って医療費が増大する中、制度を持続可能にしていく上で一定の見直しはやむを得ないだろう。現役世代が中心に担っている保険料負担の軽減につなげることも重要であり、政府は制度見直しへの理解を国民へ丁寧に求めていく努力が不可欠だ。
とはいえ、高額療養費制度は、長期の治療を続ける患者や家族にとってまさに命綱だ。近年は医療の高度化によって、多額の医療費がかかるケースも珍しくない。こうした状況で一律に負担が増えれば、生活苦や受診抑制、治療の断念に陥る事態が懸念され、慎重な対応が求められる。
公明党は、関係団体や当事者らと意見交換を重ね、制度の見直し内容に対して強く懸念する声を受け止めてきた。
これを踏まえ、西田実仁幹事長は4日に行われた自民・公明両党の幹事長会談で、1年間に4回以上利用すると上限額が下がる「多数回該当」利用者の自己負担について配慮が必要との考えを伝え、対応策を検討していくことで合意した。
政府は当事者の声を聴取するなど真摯に向き合い、不安なく治療が受けられるよう議論を急いでほしい。
また、制度の見直しは法改正ではなく政令改正で行われるが、国会でも十分な議論が必要である点を強調しておきたい。