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強盗、特殊詐欺など“闇バイト”犯罪の撲滅へ
募集投稿は「違法」と明確化
仮装身分捜査を導入、体制強化も
“闇バイト”などによる強盗や特殊詐欺といった犯罪の撲滅に向け、政府は昨年12月、「緊急対策」を取りまとめ、SNSの監視強化や新たな捜査手法の導入を進めている。東京都など自治体による防犯対策も加速している。犯行の実態とともにまとめた。
■(犯行の実態)SNSで実行犯募る/首謀者ら 直接手を染めず摘発逃れ
“闇バイト”による犯罪の特徴は、犯行グループの中核となる首謀者・指示役が犯行に直接手を染めず、実行犯は別に存在することだ。
実行犯はSNSなどで募集され、それに応じると、秘匿性が高い「シグナル」などの通信アプリを通じ、身分証明書や顔写真といった個人情報を送信させられた上で指示役から指図を受け、強盗や特殊詐欺などを実行する。犯行グループから抜けられないように脅迫する材料として、個人情報が使われるケースもある。
警察庁は、SNSに投稿される闇バイト募集に対し、警告や削除要請などの対策を実施しているが、SNS上での募集投稿は後を絶たない。十分な本人確認もなく利用できるSNSが多く、投稿者の特定が困難といった課題がある。
また、秘匿性の高い通信アプリは海外の事業者が提供しており、情報開示を求めても十分な情報が得られず、首謀者らの特定に至っていない。
実際、昨年8月以降、東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県で18件の“闇バイト”による強盗事件が発生し、46人が摘発されたが、いずれも実行犯で、首謀者・指示役は一人も捕まっていない。
実行犯の多くは20歳代以下の若年層。金銭的な動機から、安易に応募し、個人情報を送ってしまうなど、危険性への認識や、情報を読み解く能力の欠如が指摘されている。
■(国が緊急対策)
政府の緊急対策では、SNS上に氾濫する募集情報への対応として、闇バイトを示唆する内容や、募集者の名前や業務内容などの記載がない投稿を明確に「違法情報」と位置付け、SNS事業者に削除を求める。加えて、SNSでアカウントを開設する際の本人確認の厳格化を事業者に要請するとともに、海外事業者などに、日本向けの法人窓口を設置するよう働き掛ける。
捜査体制の強化に向けては、人員の増員や資機材の充実に加え、新たな捜査手法として、警察官が架空の身分証明書を使ってSNS上の募集に応じることで、摘発や募集の抑止をめざす「仮装身分捜査」を導入する。
また、闇バイトによる強盗などで盗まれた金品は、公園など防犯カメラが設置されていない場所で受け渡され、“証拠”が得られないことも多い。
そこで、2024年度補正予算に盛り込まれた自治体向けの交付金を活用。「新しい地方経済・生活環境創生交付金」で、地域における防犯カメラの設置や青色回転灯の防犯パトロール車(青パト)の整備などを進めるとともに、「重点支援地方交付金」で、個人が設置する防犯カメラなどへの支援も推進する。
公明、不安除去へ国会などで訴え
公明党は闇バイト対策強化へ、昨年12月の参院代表質問で竹谷とし子代表代行が、募集情報の即時削除や防犯カメラ・青パト整備への支援を求め、石破茂首相から「サイバーパトロールなどの取り組み強化」「防犯対策の支援」などを進めるとの答弁を引き出していた。
党内閣第一部会(部会長=窪田哲也参院議員)も、若年層が安全にSNSを利用できる環境整備や、個人を対象とした防犯カメラの設置補助などを政府に要請してきた。
窪田部会長は「闇バイトの被害は、国民の身近なところで起きている。不安を取り除くため、国・地方の公明議員が一丸となって取り組んでいく」と語る。
■(東京都、公明提案実る)“個人宅へ防犯カメラ”に補助
闇バイトなどによる犯罪の対策として、東京都は2025年度予算案に、個人住宅への防犯カメラ設置などを支援する補助事業を盛り込んだ。
対象となるのは、防犯カメラやカメラ付きインターホン、窓ガラス用防犯フィルムなどで、1世帯当たり2万円を上限に、購入費の半額を補助する。補助は、区市町村を通じて実施される。
都議会公明党(東村くにひろ幹事長)は、昨年12月の代表質問で「個人住宅などへの防犯設備の補助を実施すべきだ」と求めるなど、都民の安全・安心につながる対策強化を訴えていた。