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【主張】日銀の利上げ 暮らしへの影響つぶさに調査を
「金利ある世界」が一段と進展し、定着しつつある。
日本銀行が物価や景気のコントロールに使う政策金利を0.25%程度から0.5%程度に引き上げた。昨年7月に続く利上げで、約17年ぶりの水準となる。
今年の春闘では昨年に続く高い賃上げが予想され、基調的な物価上昇率が目標の2%に向け徐々に高まってきていることなどを理由に利上げを判断した。
利上げには、物価が継続して上昇するインフレの加速を抑制するなどの目的がある。日米の金利差が縮小方向に進むことで、過度な円安に一定の歯止めがかかることも期待できる。
ただ、米国の関税政策が与える輸入物価への影響など不確実性は高い。引き続き物価や経済の動きを注視し、機敏かつ柔軟に対応することが必要だ。
日銀は、昨年3月にマイナス金利政策を解除し、金融政策の正常化を進めてきた。今後も経済状況が想定通りに推移した場合、追加の利上げを模索する。0.5%を超えれば1995年以来の金利水準となる。
プラスの影響としては預金金利の引き上げが見込めるだろう。すでに各銀行では、普通預金や定期預金の金利を引き上げる動きが出ている。
その半面、住宅ローンや企業向け融資の金利は上昇する可能性があり、注意が必要だ。返済の負担が増したり、借り入れが難しくなる影響も考えられる。
特に、住宅ローン返済の途上にある現役世代や若年層ほど、利上げに不安を感じているのが実情ではないか。それには賃上げの実感が伴っていないことが根底にあろう。中小企業も含めた持続的な賃上げの定着が不可欠だ。
物価高や人手不足で苦しむ中小企業にとっては、利上げが経営の重しになり得る。資金繰りが悪化し、息切れを招くようなことがあってはならない。
日銀は政府と緊密に連携しつつ、家計や企業への影響をつぶさに調査し、緊張感を持って金融政策のかじ取りに当たっていくことが重要だ。