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斉藤代表の衆院代表質問(要旨)
持続的な経済成長
家計の所得向上 不可欠
所得税がかかり始める「103万円の壁」については、昨年末、与党として123万円に引き上げる案を示した。これは食品など生活必需品を多く含む基礎的支出項目の物価が20%程度上昇していることを根拠としている。その上で、物価上昇が今後も続いていく中で持続的な経済成長を実現するためには、家計所得の持続的な向上が不可欠だ。
こうした観点から、就業調整を招いている「年収の壁」は取り除くべきであり、所得税の課税最低限についても、さらなる引き上げへ議論を続けていきたいと考えている。その議論の大前提は、引き上げの根拠と財源が明確であることだ。
就業調整という意味では、本当の壁は「社会保険の壁」だ。厚生労働省の実態調査によると、配偶者がいる女性で就業調整を行っている人の57.3%が「130万円の壁」を理由に挙げており、「103万円の壁」を意識していると回答した人の割合を上回っている。
今後、最低賃金の上昇や、被用者保険の適用拡大に伴って、新たに被用者保険の対象になる人が発生することも踏まえ、「年収の壁・支援強化パッケージ」のさらなる周知と利用促進を行うとともに、誰もが壁を意識せずに働くことが可能となる制度設計を行うべきだ。仕事と家庭の両立支援など、働きたい人が持てる力を十分に発揮して働くことができる環境整備も喫緊の課題だ。
中小企業の賃上げめざせ
約3300万人が働く中小企業において、持続的な賃上げが定着できるかどうかが、経済の好循環を実現するカギであり、その原資を確保するためのあらゆる支援が求められている。
公明党が発表した「中小企業等の賃上げ応援トータルプラン」で、「労務費の適切な価格転嫁のための指針の作成、公表・徹底」を提案したのを受けて、公正取引委員会が重点的なフォローアップ調査を行っている。
昨年の調査では、全体として前年より労務費などの価格転嫁率は上がっている。ところが、道路貨物運送業や映像・音声・文字情報制作業、ビルメンテナンス業・警備業、放送業といった取引価格が上がっていない業種の回答を見ると、同じ業種間の取引で「価格転嫁ができていない」という回答が多くなっている。つまり、これらのサプライチェーンには多重委託構造が存在し、かつ価格転嫁が円滑に進んでいないことが明らかになった。
こうした課題を解決し、中小企業の「構造的な価格転嫁」を実現するためには、委託を2次、3次までに制限するなどの措置や、事業所管省庁の警告・勧告などの執行権限の拡充や、受注側が発注側の横暴を告発しやすい環境整備が重要だ。
イノベーション人材
学生や若者は本来、可能性に満ちた、創造性豊かなイノベーション人材であり、わが国の思い切った人材育成の施策として、産学官による奨学金などの教育費の支援や、博士人材の研究費の支援など、諸外国に負けない支援体制の構築を提案する。
現在、第7期科学技術・イノベーション基本計画が検討されているが、日本の科学技術・イノベーションの基盤構築には、研究力の高い研究大学群の形成や、人材育成・研究環境の整備、若者が挑戦できるスタートアップ支援など、世界に負けない投資が重要だ。また、産学官に開かれた人材の交流、就職、キャリアアップの仕組みなど若者が安心して飛び込める世界にしなければならない。
科学技術・イノベーションによって経済の好循環をいかに生み出し、世界に負けない日本の勝ち筋を伸ばしていくために、どのような取り組みをしていくのか。
復興、防災
「関連死」防ぐ体制築け
能登半島地震から1年が経過し、私は1月5日に石川県に入り、被災者から話を伺ってきた。
深刻な液状化被害に見舞われている、かほく市では、対策工事に「最短でも5年程度かかる」との声を聴き、本格復旧に向け、国による全面的な支援が必要だと改めて感じた。地震と豪雨で度重なる被害を受けた珠洲市では、「家が土砂で埋まり、もう住めない」との痛切な訴えを聴き、一層、被災者に寄り添った支援をしていかなくてはならないと深く感じた。
「いつまでに能登の復興を成し遂げる」という強いメッセージと、生活再建がイメージできる具体的な道筋を示し、不安を抱える皆さまに希望を届けていただきたい。
阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えた。この30年間にわが国を襲った大災害の教訓を踏まえ、今こそ、防災立国を築き上げなければならない。そのためには「災害関連死」を防ぐ取り組みが極めて重要だと考える。能登半島地震では、災害関連死が約300人に上り、直接的な災害死を上回る状況となっている。
現行の災害救助法では、避難所の供与や物資の提供といった救助の種類が列挙され、その範囲で福祉的支援も実施されているものの、まだまだ不十分だ。在宅避難などの要配慮者への福祉的支援に関する規定はない。災害対策基本法にも「医療」に関する文言はあるが、「福祉」という視点は明記されていない。災害関連死を防ぐため、災害関連法制に「福祉」の視点を取り入れ、あらかじめ支援体制を整備することが必要不可欠だ。
防災・減災、国土強靱化については、継続的な取り組みにより、その効果が全国各地で発揮されてきた。一方、激甚化、頻発化する台風や豪雨などの自然災害や、切迫する南海トラフ地震などの対応に万全を期すため、さらなる推進が急務だ。
残り1年となる「5か年加速化対策」を着実に推進するとともに「5か年加速化対策」後については、近年の資材価格の高騰の影響などを考慮しながら、必要十分な予算を確保し、取り組みを最大限加速すべきだ。「実施中期計画」を早期に策定するとともに、次の5か年対策では、これまでの規模を上回る20兆円規模の予算確保を求める。
外交
アジア版「OSCE」必要
本年は、広島・長崎への原爆投下から80年の節目の年だが、昨年、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞を受賞したことは人類の希望だ。
唯一、核兵器の悲惨さ、被爆の実相を知っている日本は「核兵器のない世界」の実現に向けて特別な使命を負っている。この被爆80年の意義ある年に、日本がいかにその使命を果たし、「核兵器のない世界」に向けた取り組みを主導していくかが問われている。
政府がこれまで進めてきた核軍縮・核廃絶への取り組みを新たなステージに高めるためにも、まずは日本自身が3月に開催される「第3回締約国会合」にオブザーバー参加し、核保有国と非保有国の双方との対話を通じて、橋渡しの役割を果たしていくべきだ。このオブザーバー参加が、日米安保や米国の拡大抑止を否定するものではないことを明確にしつつ、主体的に判断すべきだ。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す今こそ、紛争を未然に防止するため、アジアにおいて多国間で安全保障を話し合う枠組みが必要ではないか。欧州の安全保障協力機構「OSCE」のように大使級が毎週、顔を合わせて対話できる地域機構の創設を日本が主導してアジアにつくるべきだ。
米国で1月20日にトランプ大統領が就任した。かつてなく強固になった日米関係を新たな高みに引き上げるべく首脳会談の早期実現を期待する。
日米の経済的な結びつき、安全保障政策、人的交流が日米同盟を支える要素となっており、どれも必要不可欠だ。日米同盟があってこそ、米国にもメリットになるのだということを具体的かつ丁寧に説明していくことをお願いしたい。幅広いレベルでの意思疎通を行っていくことが重要であり、議員外交についても促進していくべきだ。アジアや欧州地域を含む、米国の同盟国や他のパートナー国との間でも連携し、国際秩序を維持していく努力を絶え間なく行っていくことが肝要だ。
今月、6年3カ月ぶりに日中与党交流協議会が再開され、公明党から参加した西田実仁幹事長は、中国共産党の要人との会談で、日中に横たわる懸案の一つとして、邦人拘束問題を取り上げ、どういう言動が中国の法律に抵触するのか明確なガイドラインを示してほしいと求めた。民間交流を活発にしていくことは両国の国民感情の改善につながり、そうした基盤の上に首脳同士の往来が実現していくと思う。世界経済や東アジアの安全保障という観点からも日中関係は極めて重要だ。
ガザへの支援
ガザ情勢に関して、米国、エジプト、カタールの仲介によって、先般、人質の解放と停戦に関する合意が発効された。
この合意では、軍事活動の停止や人質の解放のみならず、人道支援活動の増加なども定められている。停戦後の復旧・復興支援が大きな課題の一つだ。
日本政府には人道状況の改善に向け、関係国、国際機関などと緊密に連携しつつ、ガザ地区の人々への必要な支援を力強く進めていただきたい。
社会保障
ケアマネなど介護人材の確保を
2040年に向け、現役世代は急速に減少し、高齢者人口はピークを迎えていく。少子高齢化・人口減少といった大きな変革期にあっても、国民一人一人が安心して医療・介護サービスを受けられる環境を構築しなければならない。高齢者の救急搬送の増加や在宅医療ニーズの高まりが見込まれる。患者のニーズは複合化・多様化していく。
今国会では地域医療構想の見直しなども含めた法改正も検討されているが、医療機関において必要な病床数を確保するだけでなく、入院早期からのリハビリテーションを充実させたり、介護との連携や在宅医療を強化し退院後の生活に安心して移行できる体制を整備するなど、地域の医療提供体制の課題を解決するための法改正とすべきだ。その際、地域ごとに異なる医療需要に対応できる医療従事者を確保することも重要だ。
要介護認定に要する平均日数について、原則である30日を上回る自治体が9割を超えるとの調査結果が昨年末に発表された。高齢化の進展により、今後も申請件数の増加が見込まれることを踏まえると、要介護認定の簡素化や効率化は不可欠だ。認定期間の短縮に向けた具体策を国が責任を持って示し、迅速に認定結果を受けられる環境を整備すべきだ。
要介護認定を受けてもケアマネジャー(介護支援専門員)が見つからず、すぐに介護サービスが受けられないとの声も伺う。現在のケアマネの年齢構成を考えると、10年以内にケアマネが急減するとの指摘もあり、介護保険制度の要であるケアマネの確保や負担軽減は喫緊の課題だ。法定研修の見直しを含めたケアマネの負担軽減を図るとともに、他産業に見劣りしない処遇改善を進めるべきだ。
介護保険制度創設以来、増え続けていた介護職員数が、23年に初めて減少したとの調査結果も公表された。多くの人が不安を感じており、介護現場で働く人材確保は待ったなしだ。最重要課題として政府を挙げて取り組んでもらいたい。
地方創生
訪日客の経済効果を全国に
地方では過疎化が進み、女性や若者の地方離れは深刻な課題となっている。政府は「女性や若者に選ばれる地方」をテーマに掲げて、交付金の予算も倍増し大規模な地方創生策を進めるとしている。しかし、当事者から聞こえてくるのは「地方には働く場所がない」「女性の役割を求められる」といった言葉だ。
女性や若者の働き方、生き方はますます多様化している。やりがいのある仕事、楽しい地域をつくるために何が必要なのか、職場や地域などにおけるジェンダーギャップ、男女間賃金格差をどのように解消していくのか、成功事例を持つ自治体の取り組みなども参考にしながら徹底した検証が必要だ。
24年の訪日外国人旅行者数は約3700万人と過去最多を大きく更新し、訪日外国人消費額も約8.1兆円と過去最高となった。30年の旅行者数6000万人、消費額15兆円という政府目標に向けて、さらに推進すべきだ。
一方、目標達成は困難であるという見方もある。その理由の一つが、外国人延べ宿泊者数の約7割が三大都市圏に集中していることだ。インバウンド(訪日客)の経済効果を全国に波及させるためには、地方誘客を促進することが重要だ。そのためにも、日本固有の文化など地域資源を生かした観光コンテンツの造成に対して、地方への支援を強化すべきだと考える。
地方航空便の回復、地方空港のグランドハンドリング(地上支援業務)や保安体制の強化など受け入れ環境の整備も進める必要がある。オーバーツーリズム(観光公害)を未然に防止する取り組みも求められる。
若者の農業参入
日本の食と農業を支えているのは個人経営体であり、少ない農地でも生産・販売に取り組む中小・家族農家だ。こうした農家に対して国の施策が届くよう、プッシュ型の情報提供や相談体制の整備、申請手続の簡素化など各種補助制度の柔軟な運用に取り組むべきだ。
65歳以上の個人経営体の約7割が後継者を確保できていないなど、人手不足も深刻な課題だ。未来を担う若い世代が農業に参入できるよう、経営承継の円滑化や、農機具の購入、新規就農者への継続的な支援など、所得向上に向けた施策を抜本的に拡充すべきだ。
政治改革
歳費返納の法改正急げ
昨年末、公明党が一丁目一番地として進めてきた政治資金を厳しくチェックする第三者機関の設置法が成立した。今国会では、実効性を担保する制度設計の議論を深め、合意をめざしたい。引き続き、議員自らが範を示し、最後まで改革を成し遂げなければならない。
私の地元・広島では、国会議員の有罪が確定し、当選が無効となったものの、数千万円にも上る歳費を受け取っていたことに、住民から返還を求める訴えが上がったが、国が歳費の返還を請求できる規定がなく、政治不信を深める一因となった。当選無効の場合、歳費などの返納義務化や一時的に支給を停止できるような法改正も急ぎ進める必要がある。
選択的夫婦別姓
公明党は個人の尊厳を守るため、選択的夫婦別姓制度の導入を訴え続けてきた。結婚して姓を変えることで、多くの人が何らかの不便や不利益を感じている。
国際的にも夫婦同姓を義務化しているのは日本だけだ。国連の女性差別撤廃委員会は昨年、わが国に4回目の勧告を行った。経済界からも導入を望む声が相次いでいる。
制度導入に当たっては、複数の兄弟がいたときの姓の決め方や戸籍制度の改革を伴うため、細部を具体的に詰めていく必要がある。国の制度に関わることについては、まず与党が案を決め、野党に相談するのが筋だ。
石破首相らの答弁(要旨)
【石破茂首相】
<年収の壁>当面の対応として「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用拡大に取り組むとともに、被用者保険の適用拡大など制度的な対応も含めた年金法改正案を取りまとめる。
<中小企業の賃上げ>下請法の改正法案の今国会への提出に加え、下請法違反がないか業界ごとに自主点検を行い、違反があった場合には不利益の補償が行われる方策を考えていく。
<災害関連法制>▽災害対策基本法を改正し、地方公共団体の長などの責務に避難所内外での被災者への福祉サービスの提供を加えること▽災害救助法を改正し、救助活動の種類に福祉サービスの提供を加え、国庫負担の対象とすること――などについて検討している。今国会に改正法案を提出する方針だ。
<核兵器禁止条約>オブザーバー参加した国々の状況を踏まえ、検証を進めている。さまざまな要素や検証の結果を総合的かつ注意深く考慮し、締約国会合への対応を適切に判断する。
<当選無効となった議員の歳費返納>自公連立政権合意に「法改正の実現を図る」と明記されている。自民党として公明党と緊密に連携し、衆参の議院運営委員会などで議論を呼び掛けるとともに、可能な限り早期の実現に向け、議論を加速させていく。
<選択的夫婦別姓>いつまでも結論を先延ばししていい問題だとは全く考えていない。自民党としての考え方を明らかにすべく、議論の頻度を上げ、公明党とも意見交換していきたい。
【中野洋昌国土交通相(公明党)】
<インバウンドの地方誘客>地方部での滞在を促進するためのコンテンツ造成、グランドハンドリングや保安検査の人材確保・業務効率化、オーバーツーリズムの未然防止などを進め、インバウンドの地方誘客と持続可能な観光立国の推進に全力で取り組む。