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【主張】世界の気温上昇 初の“1.5度”超えに危機感
地球温暖化に伴う気候変動の影響により、世界各地で災害の激甚化・頻発化が進んでいる。
7日に発生した米ロサンゼルス近郊での山火事も気候変動が被害拡大の一因と指摘される。気温上昇が空気の乾燥を招き、火が燃え広がりやすくなるからだ。国連は、気候変動は「世界の問題」ではなく「あなたの危機」と警鐘を鳴らす。
10日発表された国連の世界気象機関(WMO)などの報告によると、昨年の地球表面の平均気温が観測史上最高を更新し、産業革命前からの上昇幅が1.5度を超えた。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は世界全体の気温上昇を1.5度以内に抑える目標を掲げるが、その基準を単年で初めて超えたことになる。
パリ協定の目標は複数年の平均で判断するため、直ちに目標未達成とはならない。だが、温暖化が深刻であるのは確かだ。国連のグテレス事務総長は「目標を達成できなくなったわけではないが、(目標の)軌道に戻るには懸命に闘う必要がある」とコメントした。
一方で、20日に就任したトランプ米大統領はパリ協定からの離脱を発表した。気候変動対策で重要な役割を果たしてきた米国の離脱によって、世界的な対策の後退が懸念される。国際社会は米国との協力の在り方を探求してもらいたい。
日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。
とりわけ重要なのは、二酸化炭素排出量の多くを占めるエネルギー分野だ。
政府の新たなエネルギー基本計画の案では40年度の電源構成について、再生可能エネルギー(再エネ)を「主力電源として最大限導入する」と明記。中でも実用化が目前に迫る、軽くて折り曲げられる性質を持つ「ペロブスカイト太陽電池」の導入目標を初めて掲げ、拡大を急ぐ方針を示した。
そのほか、再エネ由来の水素の製造・利用の後押しや浮体式洋上風力の拡大にも力を入れる。政府は、これらの早期実用化と普及へ全力を挙げるべきだ。