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【主張】ガザ停戦合意 国際社会は戦闘の再開許すな
パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム抵抗運動組織ハマスとイスラエル軍は同地区で約1年3カ月にわたり、激しい戦闘を繰り広げてきたが、19日にようやく、一時停戦とする合意が発効した。
ただ、イスラエルのネタニヤフ首相は「必要に応じて戦闘を再開する」と強調しており、楽観視できない状況だ。ハマスとイスラエルの双方が合意を確実に履行し、恒久的な停戦を実現できるよう、日本をはじめ各国が粘り強く働き掛けを続けていく必要がある。
停戦合意は第1段階として、6週間でハマスが現在、拘束している98人の人質のうち、33人を解放。イスラエルは収監しているパレスチナ人数百人を釈放し、ガザ地区の人口密集地からイスラエル軍を撤退させるとしている。
双方が第1段階での合意の履行を終えたら、ハマスが拘束する残りの人質全員の解放や、イスラエル軍のガザ地区からの完全撤退など恒久的な停戦の実現に向けた取り組みに乗り出す。
懸念されるのはイスラエルの国内情勢だ。ネタニヤフ政権で連立を組む極右政党の「ユダヤの力」と「宗教シオニズム」がどちらも離脱したら、同政権は少数与党に転落する。極右政党はハマスとの停戦合意に反対し、戦闘の継続を訴えており、ユダヤの力が19日に連立から離脱した。
宗教シオニズムの離脱を阻止するため、ネタニヤフ首相は同党の党首を務めるスモトリッチ財務相に、6週間の停戦後、戦闘を再開すると約束したとの報道もある。これが本当なら、停戦期間は第1段階のみで終わり、恒久的な停戦はめざさないということになる。
ハマスは2023年10月、民間人を中心にイスラエルの住民約1200人を殺害し、251人を人質に取った。一方、ガザ地区へのイスラエル軍の過剰な攻撃による死者は4万6000人を超え、このうち約6割が女性と子ども、高齢者だ。この双方が民間人の犠牲をいとわない非人道的な戦闘の再開を国際社会は断じて許してはならない。