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コラム「北斗七星」
平野啓一郎『マチネの終わりに』の主人公・蒔野は、洋子と出会った夜に語る。「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてる」。勘違いで後悔ばかりの身には、ありがたい一言ではある◆「人生は選択の連続」(シェイクスピア)というが、避けられなかったのかと、悔やまれてならない道もある。沖縄から九州に向かった学童疎開船「対馬丸」。米潜水艦の魚雷に沈められ、学童784人を含む約1500人が犠牲になった。きのう、75年を迎えた◆故・外間守善氏は、13歳の妹を送り出した。戦後、沖縄戦の企画展で研究者として皇太子ご夫妻に説明した場面を、自伝に綴る。「妹も乗っていました。帰りませんでした」。口をついて出た言葉に、美智子様がハンカチを握り締め、体を震わせた◆級友と乗ろうとしたが、10円の船賃を工面できなかったのは、喜劇の女王・仲田幸子さん(86歳)。地上戦をくぐり抜け、収容所で終戦を迎える。「生きてる限り、死なないさぁ」と、沖縄の復興を支えた◆沖縄学の継承・発展に努めた学究人生。笑いで県民を励まし続けた役者魂。歴史を消すことはできずとも、死者の無念を胸に、過去に意味を持たせることはできる。「過去を変える」とは、そういうことかもしれない。(也)









