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【主張】あおり運転 根絶へ一層の厳罰化も検討を
自動車で走行中に車間距離を極端に詰めたりする「あおり運転」の根絶に向け、一層の対策強化が必要だ。
高速道路で強制的に停車させ、窓越しに殴打する――常磐道で起きた「あおり運転殴打事件」の映像には、多くの人が背筋を凍らせたことだろう。こんな危険行為を許してはならない。
警察庁は昨年、悪質で危険な運転に対しては、道路交通法に限らず、刑法の暴行罪や殺人罪を適用するなど、あらゆる法令を駆使して厳正に対処する方針を、全国の警察に通達した。
この通達では、著しく危険な運転をする恐れがあるドライバーは「危険性帯有者」として、違反の累積点数を満たしていない場合でも、積極的に運転免許の停止処分を行うこととしている。
ただ、警察の取り締まりが強化されているとはいえ、今回の事件があまりに衝撃的だっただけに、さらなる厳罰化を求める声は少なくない。
検討すべき論点は、いくつかあろう。
例えば、今回のような高速道路で強制的に停車させる行為は、「走行中」の行為を罰する危険運転致死傷罪の適用が難しいとされる。「危険運転」の対象は妥当なのか、議論の必要がある。
また、あおり運転を繰り返して違反点数が重なれば、免許の取り消し処分を受けることになるが、危険性帯有者と判断されるだけでは、最長180日の免許停止処分にとどまる。常習性や危険の度合いによっては、免許の取り消し処分を検討してもいいのではないか。
道交法には、車間距離保持義務違反や急ブレーキ禁止などは定められているが、あおり運転を直接罰する規定はない。この点も論議すべきだ。
一方、あおり運転の加害者の特定や被害を抑止する効果が期待され、注目されているのが、車の前後の映像や音声を記録できるドライブレコーダーだ。普及を進めようと、購入費の一部を助成する自治体もある。国としても積極的に後押ししてもらいたい。
あおり運転に遭遇した場合には、車の窓を閉めてドアに鍵をかけ、躊躇なく110番通報することも確認しておきたい。